2010年、SLの修繕作業が行われている梅小路蒸気機関車館(当時、京都市下京区、時事通信フォト)
SLの譲渡先は2020年1月中に選定委員会によって決定する。2者からの応募があったことで、ひとまずSLが広場で朽ちていく運命は免れた。しかし、SL受難を思わせる衝撃的な事態はほかの地域でも発生している。
このほど、京都府与謝野町にある加悦(かや)SL広場が2020年3月末で閉鎖することを発表した。加悦SL広場には、SLをはじめ鉄道史を彩ってきた車両が保存・展示されている。
保存・展示された車両は、定期的にメンテナンスしなければすぐに腐食してしまう。保存・展示車両にメンテナンスは欠かせないが、その費用は重い負担になる。特に、SLの保存には莫大な費用がかかる。また、メンテナンスを受け持つ人員も必要になる。加悦SL広場のメンテナンス担当者はたったの一人。一人で車両の維持・管理を受け持つことは不可能だろう。加悦SL広場の閉鎖は、苦渋の決断でもあった。
加悦SL広場のたった一人でメンテナンスを受け持つ体制も大変な話だが、公園などに保存されているSLはボランティアやNPO団体にメンテナンスを依存していることが多い。しかし、ボランティアスタッフの多くが高齢化により引退し、メンテナンスを受け持つ人間は少なくなった。そのため、各地のSLは放置されっぱなしになっている。
各地のSLが姿を消すという危機感が広がる中、それでもSLの保存・展示を模索している団体もある。名古屋市にある名古屋市立科学館も、粘り強くSLの保存・展示に取り組んできた。名古屋市科学館の担当者は言う。
「それまで当館のSLは敷地内に展示しているだけでした。3年前に動態保存を含めて、さまざまな活用を模索するべく、大阪の業者へ点検に出しました。そのため、現在は敷地内に線路だけ残されている状態になっています」