河村たかし一覧

【河村たかし】に関するニュースを集めたページです。

森喜朗氏は「発言の前後が消えている」と報道を批判するが(AFP=時事)
2021年「政治家の失笑発言大賞」、勝手に選定してみた
 口は災いの元、だが政治家はその言葉こそすべてだ。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。 * * * 2021年も、あとわずか。去年から続いたコロナ禍、ワクチン騒動、東京オリンピック・パラリンピック、衆議院選挙、総理大臣の交代、鉄拳の素顔公開……などなど、大きな出来事がたくさんあった一年でした。そんな中で、政治家の“トホホな発言”も花盛り。誰がどんなことを言ったかを忘れないために、印象的な発言を振り返ってみましょう。 呼び方ですが、「失言」だと「悪気なくうっかり口がすべった」というニュアンスになりかねません。多くは「暴言」のほうがふさわしそうですけど、年末にケンカ腰になるのも控えたいところ。本人は大真面目に発しているものもあります。批判や軽蔑や呆れた気持ちをより強く込めるために、まとめて「失笑発言」と呼ぶことにしました。【政治家の失笑発言大賞トップ10】(肩書は当時、飛び出した順)●森喜朗東京オリパラ組織委員会会長「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」(2月)●小泉進次郎環境大臣「プラスチックの原料って石油なんですよね」(3月)●河村たかし名古屋市長「最大の愛情表現だった。金メダル獲得は、あこがれだった。迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」(8月)●菅義偉首相「そのようなご指摘は当たりません」(9月など多数)●岸田文雄自民党総裁「岸田文雄の特技は、人の話をしっかり聞くということであります」(9月)●麻生太郎副総理「温暖化したおかげで北海道のコメはうまくなった」(10月)●吉村洋文大阪府知事「ブーメランが刺さりました」(11月)●二階俊博自民党元幹事長「(菅前首相に)『辞めてもらう』とか言う資格があるか。任命権者だと思っていたら大間違いだ」(11月)●福田達夫自民党総務会長「この事務費はしっかりとすぐに(市中に)流れるので、考えようによっては経済対策の一部にはなる」(12月)●石原伸晃内閣官房参与「まだ十分に体力、能力ともにあると思っているので、役に立つアドバイスをしたい」(12月) 順に振り返ってみます。森氏の発言は激しい怒りを買い、翌日あわてて謝罪会見を開きました。しかし、開き直りとも逆ギレとも取れる態度でさらなる批判や失笑を集め、結局会長を辞任することになります。小泉氏はラジオ番組で得意げにこう発言。聞いていた多くの人は、失笑しつつ「知ってるよ!」と突っ込んだことでしょう。 河村氏はソフトボール日本代表選手の金メダルを勝手に噛んだことが批判され、この謝罪コメントを出しました。しかし、謝る気があるとは思えない文面で、さらなる怒りと失笑を買ってしまいます。菅氏は首相時代、これに限らず多くのお決まりフレーズが失笑を招きました。「安心安全な大会を」「仮定の質問にはお答えできません」などなど。 岸田氏の発言は、自民党総裁選で勝利を収めた直後の挨拶で述べたもの。この段階では少しだけ期待を持たせてくれましたが、いまあらためて見ると失笑を禁じえません。ここに出てくる「しっかり」は岸田氏の口癖であり、おもにあんまりしっかりやる気がない場合に、ことさら念入りに使われがちです。 麻生氏は、日本を代表する失笑発言メーカーのひとり。温暖化云々は科学的には大間違いだし、何より生産者の努力を無神経に踏みにじっています。吉村氏の失笑発言メーカーっぷりも、なかなかパワフル。国会議員が1日の在職でも丸ごと1月分の文書通信交通滞在費が支払われていることを厳しく批判したまではよかったのですが、自分も6年前にその恩恵を受けていたことが判明しました。そのことを受けての自虐ギャグです。 二階氏も、幹事長時代は多くの失笑発言を繰り出してくれました。これは11月に都内で講演を行ったときの発言。8月末に当時の菅首長から幹事長の交代を打診されたことを振り返って、憎々しげに語りました。いや、実際には総裁が任命権者なんですけどね。また、司会者に「菅前首相と対等な関係か」と問われて、「対等でもなんでもないけど、生意気いうもんじゃないよ」と怒りを見せる場面もあったとか。 福田氏の発言は、18歳以下への給付を現金とクーポンに分ける“正当性”を主張したもの。要するに「クーポンにすれば間に入った会社が儲かるから」と白状しているわけで、その迂闊っぷりに失笑せずにはいられません。石原氏の発言は、岸田首相が強引に内閣官房参与のポストを与えたときのもの。10月の衆議院選挙で落選したことについても「私の不徳の致すところ。勝負は時の運だ」という失笑発言をしてくれています。 いずれも甲乙つけがたい、というか丙丁つけがたい味のある失笑発言ばかり。無理を承知で年間大賞を選ばせていただきます。ジャカジャカジャカ……。2021年「政治家の失笑発言大賞」は、混迷の五輪イヤーを象徴するという意味で、森喜朗氏の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」に決定です。おめでとうございます! このトップ10、最初は政治家に絞るつもりはなかったんですが、あっという間に政治家だけで10の枠が埋まってしまいました。2022年も、いろんな政治家がいろんな失笑発言をしてくれるでしょう。頼もしい限りですね。
2021.12.12 16:00
NEWSポストセブン
藤井聡太三冠(時事通信フォト)
河村たかし市長の将棋会館構想 見栄っ張り名古屋を象徴する出来事
 藤井聡太三冠は愛知県が生んだ棋界のスターだが、そのブームに名古屋市長の河村たかしが“便乗”したのが3年前のこと。藤井三冠が当時、史上最年少での七段昇段を果たし、「名古屋に将棋会館があってもええがな」と発言したのだ。 河村市長は『週刊ポスト』に〈東京や関西に行くより、近いほうがええがや〉〈名古屋城が見える場所に造れるとええね〉(2018年6月15日号)と語っていたが、現在までその構想が実現していない。どうやら資金面での目処は立っていなかった様子。まさに“見栄っ張り”の名古屋を象徴する出来事だった。 ちなみに藤井三冠は「瀬戸市」出身。名古屋市民は愛知県内の他地域出身者に厳しいことでも知られるが、藤井三冠だけは“例外”というわけか。※週刊ポスト2021年11月19・26日号
2021.11.16 11:00
週刊ポスト
河村たかし名古屋市長は布マスクを着用することが多い。写真は有松・鳴海絞のマスク(時事通信フォト)
河村市長がブレイクスルー感染 罹患した人を責めてはだめだ
 新型コロナウイルスのワクチン2回接種を終えていた河村たかし名古屋市長が、コロナ感染していたことがわかった。ワクチンを接種したあとでも感染することをブレークスルー感染といい、河村市長もそれにあたる。どの感染症に対するワクチンでも、効果は100%にならないので新型コロナウイルスだけの特殊なことではないのだが、ワクチンを打っても意味があるのだろうかと考える人がいても不思議はない。俳人で著作家の日野百草氏が、ワクチン2回接種を終えた高齢者の不安な気持ちを聴いた。 * * *「ワクチン2回打ってるのに罹るのね、コロナって怖いわ」 多くがワクチンを打ち終わっている後期高齢者のみなさん。筆者はカルチャーセンターや趣味の会などで多くの高齢者と共にする機会が多いが、彼ら、彼女らの心配は2回打ってもコロナに罹るのでは、ということだ。「河村さんって2回打ったんでしょ、それで罹るなんてね」 80代の女性が切り出すと「そうよね」「怖いね」とみなさん相づちを打つ。名古屋市の河村たかし市長(72歳)が新型コロナウイルスに感染しているとの報道を受けてのよもやま話だ。「お若いのにね、怖いわね」 80代からすれば70代の河村市長などまだ若い。情報源は主にテレビや新聞だが、最近はスマホのネットニュースもチェックする高齢者が増えている。とくにコロナに関する情報は命に関わるので怠らない。河村市長は8月29日から自宅待機だが、とにかく高齢者にとってショックなのが「ワクチン2回打ってるのに」だ。「打てば大丈夫と思ってたけど、そうでもないのね」 未知のウイルスだけに絶対はない。厚生労働省によれば、ファイザー社製で2回目接種後7日経ってから以降、抗体ができるまで2週間程度が必要とされている。それでも有効率は95%、2回打って抗体ができるとされる2週間が経っても5%は罹患する。モデルナは94%、アストラゼネカは70%で、いずれも100%の保障はない。ただしこの%は人数とイコールではなく、たとえば100人打っても5人は感染するといった意味ではない。あくまで「発症予防」の意味合いによる有効性とその確率である。「じゃあ河村さん、運がなかったのね」 そうかもしれないが、現状では発熱もなく過ごしているとの発表を聞く限り重篤化はしていない。罹患は仕方ないが、副反応よりノーワクチンによる重篤化のほうが怖いとされている。「接種によるベネフィットが上回ると考えられることから、予防接種が実施されている」というのが厚生労働省の見解だ。米疾病対策センターも発表しているが、ワクチンを2回打っても今回の河村市長のように罹患する可能性はあるものの、重篤化は極めてまれとされている。「でもコロナってどんどん新しいのが出てるんでしょう? (ワクチンが)効かなくなるんじゃないかしら」 もっともな話で、厚生労働省は国立感染症研究所の分析とともに「懸念される変異株」と「注目すべき変異株」を発表している。前者は「主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株」でアルファ株、ベータ株、ガンマ株にいま懸念されているデルタ株。後者は「主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株」で、イプシロン株(米国)、シータ株(フィリピン)、カッパ株(インド)、ラムダ株(ペルー)と、前者に比べ聞き慣れない変異株が並ぶ。そしてこれに9月1日に明らかにされたミュー株(コロンビア)が加わることになる。WHOはこのミュー株を「注目すべき変異株(VOI)」であり、「ワクチン耐性を持つ」可能性があると示準している。ワクチン打ったからもう平気ってノーマスク「なにを信じたらいいかわかんないわね、でもまあ、死ぬときは死ぬから」 みんな笑うが、どこか納得いかない乾いた笑いであることがマスク越しにも伝わる。長生きして、まさか晩年にこんな疫禍の時代を迎えるとは思わなかっただろう。「でもね、知り合いのお爺さんなんてワクチン打ったからもう平気ってノーマスクなの。あの人も死ぬときゃ死ぬなのかしらね」 困ったことに、こうした「ノーマスクおじさん」および「ノーマスクおじいさん」が極稀にうろうろしていたりする。地域によっては稀ではなく普通にいる。たとえば都心の歓楽街などマスク規律が限りなくゆるい「ノーマスクお兄さん」が普通に歩いている。東京などまだマシで、筆者の故郷の千葉県、そのさらに田舎などノーマスクでママチャリ漕いでる爺さんが当たり前である。高齢者の経営するノーマスクの飲食店が普通にあってびっくりした。「でもマスクって効果ないって話もあるし、私もみんながしてるからしてるけど、苦しいし嫌よ、気持ちはわかるわ」 70代後半、別のお婆ちゃんが混ぜっ返す。もうマスク論争は1年半におよぶが、彼女の言うこともまたもっともで、ワクチン以上にマスクでウイルスを防げる効果が、私たちが期待するほど高くないのは確かである。東京大学医科学研究所によれば、相対する者が吸い込むウイルス量は、吐き出す側がマスクをすると不織布、布マスクともに30%程度、吸い込む側がマスクをした場合は不織布で50%、布マスクで80%程度抑えられたという。理化学研究所の「富岳」による実験では、咳をした場合に抑制できる飛散は不織布マスクが80%、ポリエステルや綿のマスクで70%。絶対でないところが悩ましい。「河村さんって手作りマスクだったでしょ、やっぱり布はだめなのね」 高齢者の一部にはいまだに布製の手作りマスクの人がいる。若者の一部はポリエステル(ウレタン)のおしゃれマスクだろうか、それらより有用性の高いとされる不織布を「ダサい」というだけで嫌う困った人もいる。お年寄りの布マスク派は「使い捨てがもったいない」だそうだ。ただ先にも書いた通り、マスクの材質による効果の差はあるものの、どれも絶対ではない。そもそもマスク自体「現時点では、市中におけるマスク着用の有効性に関するエビデンスは限られている。」とWHOが発表している事実がある。ECDC(欧州疾病予防管理センター、EUの専門機関)に至っては「市中における非医療マスク着用の有効性に関するエビデンスはわずかで、確実性は低い。」とまで断じている。「効果の大きさは不確実」(ECDC)というのが実態だ。 こう書くと反マスクを喜ばせてしまいそうだが、それでも「小~中程度の有効性がある」(ECDC)としているならば、まあマスクをするに越したことはないだろう。それにしても、本当にやっかいなウイルスだ。誰しも罹患する可能性がある「ワクチン漬けにされるのも嫌だけど、どうにもならないものね」 大丈夫、私たちは生まれてずっと何らかのワクチン漬けである。お年寄りも生まれた時はともかく、これまでに数多のワクチンを打ってきたはずだ。コロナワクチンはそれらに比べれば治験も実証も十分でないが、未知のウイルスに対峙したばかりの人類、致し方ないと言っては語弊があるかもしれないが、実際、いたしかたないのが現実だ。どうにもならない、その中で最終的な判断は個人に委ねられている。厳しいが、これもまた現実だ。「あの人なんだか憎めないのよね、河村さん、かわいい人よね」 かわいいとか同意に困るが、今回の件に関してだけはメダルの件やセクハラとは別に彼を責めてはいけないことは確か。ワクチン2回接種で罹患という稀に見る症例、お気の毒な話でこうしてお婆ちゃんたちも心配している。幸い重篤ではないようで、かわいいかはともかく、昭和脳さえ治れば悪い人ではないと思う(自信はない)。「情報とかいっぱいで、わかんないのよね。だから市の広報誌で決めてるわ」 彼女たちは幸いにして陰謀論にはハマっていなかったが、情報を取り込みすぎて陰謀論者になってしまう者もいる。ワクチンを打つも打たないも現時点の日本では自由である。今回の記事は筆者が趣味の会で教える高齢者のみなさんに厚生労働省の資料を使い説明したことを書き起こしたが、「国は嘘つき」「行政は隠蔽している」とワクチンを打たないのもまた自由である。問題はそれを他者に押しつけ、攻撃することである。結局のところ、「エビデンスは限られている」(WHO)とされていることは事実なのだから。「じゃあ河村さん責めちゃだめね」 お婆ちゃんの言う通りで、マスクがなんであれ、ワクチンを2回打っても河村市長のように罹るときは罹る。だから罹患した人を責めてはだめだ。メダルとかシャチホコとかなんでも口にしてしまう赤ちゃんのような河村市長だが、それとこれとは別。「菌メダル獲得」などと揶揄してはいけない。誰しも彼のように罹患する可能性がある。現時点ではマスク(なるべく不織布マスク)をして、手洗いなどの消毒を徹底して、ワクチンを打つ、ベストではないがベターな対応はこれしかない。それぞれに生活が、人生があるのにこのコロナ禍というのは理不尽な話だが、その理不尽の矛先を他者に向けるような、コロナではなく人間という敵を作り出す分断だけは避けなければならない。※今回の情報はすべて厚生労働省の公式ホームページの発表を元にしている。あらゆる国内外の想定と評価を網羅しているので一読することを薦める。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。
2021.09.04 16:00
NEWSポストセブン
【動画】河村たかし直筆文、謝罪の専門家あ然 「二重線で直すなんて」
【動画】河村たかし直筆文、謝罪の専門家あ然 「二重線で直すなんて」
 ソフトボール選手の金メダルをかんだ問題で市の職員たちに迷惑をかけたとして、直筆謝罪文を送った河村たかし名古屋市長。その謝罪文にも波紋が広がっています。 文字の大きさはバラバラで、行書とも違う癖のある崩し字。後半では「私が悪かったことでご=ざいます」と、字を間違えたのか、二重線で消した部分もありました。『謝罪の作法』の著書がある増沢隆太氏は「二重線で直すという行為は謝罪文書では論外です」と呆れかえっています。【↑ 上の写真クリックで動画へ】
2021.08.28 07:00
NEWSポストセブン
東京五輪ソフトボール日本代表選手の金メダルをかじったことについて、謝罪文を読み上げる河村たかし名古屋市長(時事通信フォト)
若年女性へのボディタッチは恐怖でしかない、のが現代だ
「お互いの行き違いがあっただけ」「親しみの気持ちをこめただけ」などの言い回しは、ハラスメント行為の加害者がよく使う言い分けだ。残念ながら、この言い分けが通用した時代が少し前にあり、いまだにその当時の言動を続けている人たちがいる。その一人だと目される河村たかし名古屋市長の金メダル齧りやセクハラ事件をきっかけに、過去の女性声優へのハラスメント事案が呼び覚まされた。俳人で著作家の日野百草氏が、上位者によるハラスメントが公然と見過ごされた時代を振り返り、もう終わりにしようと呼びかける。 * * *「河村は常習犯です。アイドルから声優まで見境なく肩を抱き寄せます」 筆者のDMに来たファンからの投書、河村たかし市長(72歳)のSKE48に対するセクハラについてだった。2013年1月30日付の報道写真を見る限り、確かに河村市長はSKE48のリーダー(当時)高柳明音さんの肩を抱いて飛び入り参加している。常習犯かはともかく、接触過剰なのは事実のようだ。「声優もそうです。すみぺとか、みっくとか、被害に遭ってます」 どちらも人気声優、すみぺは上坂すみれさん、みっくは伊藤美来さんのことだ。筆者の筆によるものではないが『河村たかし・名古屋市長 7年前にも未成年声優への「抱きつきセクハラ」』は「週刊ポスト」でも伝えられている。2014年「世界コスプレサミット」において、当時17歳の伊藤美来さんの肩に手を回し、抱きついた行為だ。上坂すみれさんに関しては2017年の「蒲郡コスプレサミット」とのことで、こちらも複数の目撃談がある。セクハラという点はもちろん、ファンにとっても公然の「許しがたい行為」だった。河村市長、正直いい度胸だと思う。金メダルを齧られた上にセクハラ会話で詰められロイターにまで報じられたソフトボール日本代表後藤希友選手と同様彼女たちもまた、河村市長のセクハラの被害者だった。いくらイベントのお祭り騒ぎとはいえ公人、それも名古屋市という日本有数の自治体の長がすべき行為ではないだろう。「肩を抱いただけって済ますのはおかしいです」 当該記事を読んでのDMだそうだが、SNSや匿名掲示板の「それくらいいいじゃないか」という意見に納得できないという。残念ながら、中高年やその上の年代の一部男性には、こうした旧態依然の価値観がいまだはびこっている。どれもマッチョかつ現代の社会規範にアップデートできていない方々の意見であり、それに対して「違う」と声を上げるファンの声のほうが正しい。「相手がどう思っているかにもよる」なんて話はもう通用しないのに。された側は上位者相手ゆえに愛想笑いするしかないし、「なんとも思っていない」とか、「気にしてない」とか言うしかない。ゆえにセクハラは深刻であり、許されない行為なのだ。筆者もかつてそうした光景を何度も見てきた。その若手女性声優は肩を抱かれてやってきた もう15年も前の話、その若手女性声優は肩を抱かれてやってきた。あるアニメのプロデューサー氏に。「今日は仕事の打ち合わせでね、次の作品をお願いしようと思って」 新宿、隠れ家的な雑居ビルのバーの狭い通路を通るために仕方なく肩を寄せたのだろうか、二人は交際しているのだろうか、その日は饒舌なプロデューサー氏の新作アニメの企画とそれまでの作品の自慢を聞き流して店をあとにした。後日、現場(スタジオ)で出会った時、彼女のほうから話しかけて来た。「違いますからね、あれ、たまたま出会っただけなんです」 そういうことをしない声優であることは筆者も知っていた。彼女のことは仕事を通してデビュー当時から知っている。逆に「そういうこと」ができないくらいに不器用で、ある意味ギョーカイ的には損しているような女性だった。正直、人気があったとは言い難い。あの時代、並みの人気や実力なら男性スタッフにかわいがられるような、露骨に媚を売れるような女性声優のほうが仕事のチャンスは増えたのに、それができない人だった。筆者はただ、「そうですよね、びっくりしました」 と答えるしかなかった。はっきり言って、こうした場面に出くわしたのは他に何度かある。ただ、きっちり女性声優の口からこの言葉を聞けたのは、彼女だけだった。「ほんと嫌でした。だから誤解しないでくださいね」 彼女は本当に嫌がっていた。しかし平気でそれをする男がいる。仕事の権限を握る上位男性がいる。いまのアニメ・ゲーム業界は知らないので「いた」としておこうか。 もうひとつ、別の話。こちらはさらに遡ること1990年代。「お疲れ様でーす」 当時、取材に来ていた筆者の前を若手女性声優が通る。彼女(先の女性声優とは別)はこっそり裏口からひとり帰ろうとする。ゲームのアフレコは自分の出番が終われば先に帰ることも多いのでとくに気にはしなかった。彼女もまた大きな仕事はなく、ギャルゲーと呼ばれたジャンルで何本か出演している駆け出しの声優だった。眉をひそめた弱々しい笑みで振り返り、裏口から出ていく。 しばらくすると「○○さんどこ?」という野太く大きな声がする。執拗に呼んでいる。「内緒、黙っててね」 ベテランの女性声優は見ていたのだろうか、筆者の隣に立つと優しく小声で語りかけてくる。目は笑っていない。なにかとても怖いものを見た気分になった。その野太い声の主は小さなゲーム会社の社長兼プロデューサーだった。筆者はてっきりまだ収録が残っているから呼ばれているのかと思ったら、そうではなかった。 のちにそのベテラン女性声優に別件で取材した時に聞いたのだが、その若手声優は社長にセクハラを受けていた。確かにスタジオの控えで後ろから肩を揉まれている姿を見た。マネージャーは、事務所はなにをしているのかと怒る向きもあるだろうが、昔はどんな人気声優でも一人で電車やタクシーで来ることが当たり前だった。いまも声優業界に関してはそれほど変わっていないと思う。どんな人気声優も現場に来るのは一人が多い。かつてのゲーム業界、とくに中小は社長が絶対でやりたい放題が多かった。仕事の発注主は上位者、事務所もちょっとくらいなら見て見ぬ振り。声優業界もまた、芸能界である。業界関係者は大なり小なりやってました「確かにありました。セクハラでは済まないような論外なのもいました」 旧知のアニメ製作者、半分引退状態のベテランだが、1980年代からのアニメ業界の裾野を見てきた。「それでも、昔に比べればマシになったと思いますよ。もうそんな時代でもありませんし、むしろコンプライアンスの厳しい製作側より、男性声優からの女性声優、とくに若手に対するセクハラのほうが深刻じゃないですか? 好き放題ですよ。男性声優同士のパワハラもありますし」 昔ほど製作、制作ともに力を失った部分もあるし、多くは会社員か組織に属している。ましてSNSによって声を上げられる時代、昔ほどセクハラまみれということもないのだろう。それに比べて役者同士はどうしてもコンプライアンスがゆるくなる。新人引っ掛けてなんぼとうそぶく男性声優、いまは知らないが、かつては実在した。「狭い業界だし、体質も古いままですからね。あくまでマシというだけですが」 実のところ、彼もまた、昔はセクハラの常習犯だった。失礼を承知で「あなたもでしょ」と一か八か切り出してみたが、「うーん、僕も役得はあったね」と告白してくれた。20年前の話、実名さえ出さなければ書いても構わないというので書くが、「まあ、ほとんどの業界関係者は大なり小なりやってましたから、特定できませんしね」 という彼の言葉は真理である。時代もあるが、それほどまでに日本全体で当たり前だった。やはりセクハラは間違っている こうした行為は1990年代、2000年代初頭の日本では当たり前のように繰り返されてきた。1997年の男女雇用機会均等法改正による女性に対するセクハラ規定までは、女子社員のお尻を叱咤の意味で軽く叩いたり、慰労と称して肩を揉んだり、飲み会で新人女性の肩を抱く上司というのは普通にいた。それでもセクハラ裁判が頻発したため2007年には改正男女雇用機会均等法によりさらに厳しく定義された。「一般職の女の子のお尻にタッチする愉快な上司」というキャラクターもテレビや漫画の世界から消えた。こうして社会はアップデートされていく。しかし河村市長のようにアップデートできない老人が普通にいる。 冒頭の若手女性声優は二人とも活動はしているが、大きな仕事の表舞台からは消えている。そうなった理由はこれと関係ないかもしれない。それでも、声を出せなかった彼女たちを思うと、その裏にいる大勢のセクハラの被害者のことを思うと、河村市長やその支持者からすればしつこい話と思われるかもしれないが、やはりセクハラは間違っている。そうした旧来の過ちは否定しなければならないし、公人がおおっぴらにやらかすのは論外である。 もう上位者によるむやみな若年女性に対するボディタッチはやめにしないか。それは親しみでもなんでもない。相互同意でお付き合いしている仲ならともかく、そうでない男性から抱きつかれるのは恐怖でしかないだろう。怖くなくとも、大半は嫌だ。声を上げられないだけである。もちろん男性だけではなく、女性だって上位者として若い男性の嫌がる行為をしてはならない。もうそんな時代ではないし、そうした時代が間違いだったのだ。 コンプライアンスの厳しくなる昨今、相手に対するリスペクトなき行為の繰り返しは最終的に自分自身を追い詰める。しかしそれは河村市長だけではない。ミュージシャンによるいじめ自慢の件しかり、プロ野球選手による差別的いじりと暴力しかり、これまで多くの人が傷つき、ゆえに望んだ現代の社会規範をいまだに蔑ろにしてアップデートする気のなかった人間の末路である。 それにしたって、どれもこれも、名古屋市長という立場でやることじゃないだろう。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。
2021.08.24 16:00
NEWSポストセブン
河村市長
河村たかし市長の直筆文に謝罪の専門家もあ然「二重線で直すなんて」
 河村たかし・名古屋市長(72)が同市職員に向けて送った直筆謝罪文に、波紋が広がっている。東京五輪ソフトボール日本代表・後藤希友(みう)選手(20)の金メダルに突然噛みつき抗議が殺到したことに対し謝罪の意を表明したものだが「ヒドすぎる」「謝罪とは思えない」と話題なのだ。 文書は「名古屋市職員の皆様へ」という大きめの文字で始まるが、「職」の文字は簡略化した文字。「この度は私がひきおこした金メダル事件により」と始まる本文も、文字の大きさはバラバラで行書とも違う癖のある崩し字。句点(。)は丸くなっておらず平仮名の「し」のような形になっている。「ひきおこし」は平仮名だが(「引」は小学校第二学年配当、「起」は同第三学年配当。学習指導要領より)、「お詫び申し上げます」は漢字など、漢字仮名交じりも統一感がない。 後半では「私が悪かったことでご=ざいます」と、字を間違えたのか、二重線(=)で消した文書になっている。そして書面の右下で、「上」の字を右下に伸びたカタカナの「ヒ」のような字体で「以上」と締めくくっていた。『謝罪の作法』の著書がある東北大学特任教授で人事コンサルタント(RMロンドンパートナーズ代表)の増沢隆太氏は言う。「こうしたメモのような雑な書き方、とくに二重線で直すという行為は謝罪文書では論外です。企業に向けて書く履歴書も修正はすべきではないと考えますが、さらにフォーマルであるべき謝罪文において、こうした書き方をしては、相手に到底受け入れられません。 市の職員向けという“世間一般に向けたものではない”ことや、河村市長のキャラクターでもある独特な言葉遣いであること、人によって字の得意不得意があることを鑑みても、せめて、もっと丁寧に書くべきです」 そもそも、噛みつき問題の直後にも「愛情表現だった。迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」と釈明する自覚のなさで批判を受けていた河村市長。「選手のものであるメダルをかじるのはハラスメント行為ですが、その行為に対しては全く説明や謝罪ができていません」(増沢氏) 金メダルかじり以降、過去にも未成年声優や有名アイドルへの“抱きつきハラスメント”をしていたことも指摘されているが、河村市長からの説明はない。 河村氏の謝罪の意思は、「文字通り」受け取るしかないのか。
2021.08.24 12:00
NEWSポストセブン
【動画】河村たかし市長 7年前にも未成年声優に抱きつきセクハラ
【動画】河村たかし市長 7年前にも未成年声優に抱きつきセクハラ
 ソフトボール・後藤希友選手の金メダルを噛んだことで批判にさらされている河村たかし・名古屋市長。 品格を欠いた言動はこれが初めてではありませんでした。 2014年7月26日、中部国際空港で開催された「世界コスプレサミット」でのこと。 開会式のテープカットに招待された河村市長はなんと、登壇するや否や壇上にいた声優の伊藤美来さんの肩に手を回し、抱きついたのです。 突然の“ご乱行”に観客席からはブーイングが上がりましたが河村市長は気にも留めなかったそうです。【↑ 上の写真クリックで動画へ】
2021.08.17 16:30
NEWSポストセブン
河村市長
河村たかし・名古屋市長 7年前にも未成年声優への「抱きつきセクハラ」
 東京五輪で優勝したソフトボール・後藤希友の金メダルを噛んだことで日本中から批判にさらされている河村たかし・名古屋市長。「配慮が足りなかった」と謝罪したが、果たして反省しているのだろうか。 河村市長の品格を欠いた言動はこれが初めてではない。本誌・週刊ポスト記者の目前で行なわれたことがある。 2014年7月26日に中部国際空港で「世界コスプレサミット」の開会式が開催された。世界30か国以上から日本のマンガ・アニメのコスプレ愛好家が集うイベントで、03年より名古屋で開かれている。開会式のテープカットに大村秀章・愛知県知事と共に招かれた河村市長は、登壇するや観客が目を丸くする行為に及んだ。 壇上にいた声優の伊藤美来(24)の肩に手を回し、抱きついたのだ。突然の“ご乱行”に観客席からはブーイングが上がったが、河村市長は気にも留めなかった。 彼女のファンだという他のイベント参加者は、今もその場面を鮮明に覚えている。「今でこそ人気アニメの主演を務めたり、少年誌の表紙を飾るなど人気声優のみっく(伊藤の愛称)ですが、当時は未成年で実績乏しい新人声優にすぎなかった。みっくは河村市長に抱きつかれて驚いた顔を見せましたが、抵抗もせず苦笑いを浮かべるだけでした。ファンとしては許し難いことです」 今回の金メダル騒動を受け、ツイッター上では他の参加者からも〈河村たかしを今でも許してないよ〉と怒りの投稿が見られる。 当事者の河村市長はどう考えているのか。名古屋市に問い合わせると、「出席しているという資料は残っているのですが、状況もわからないため、お答えしづらい」(観光推進課)とのこと。※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号
2021.08.16 07:00
週刊ポスト
ソフトボール女子五輪代表の後藤希友投手(右)の表敬訪問を受け、首に掛けてもらった金メダルにかみつく名古屋市の河村たかし市長(時事通信フォト)
河村”メダル噛み”市長に学ぶ「恥ずかしいオッサン」にならないための心得
 人の振り見て我が振り直せ、人生のポイントである。大人力について日々研究を重ねるコラムニストの石原壮一郎氏が考察した。 * * * 今回の東京オリンピックで、人々の感情をもっとも激しく揺さぶったのは誰か。それは間違いなく、金メダルに嚙みついた河村たかし名古屋市長です。 とんだ災難に見舞われたのは、ソフトボール日本代表の一員で金メダルを獲得した後藤希友投手。4日に河村市長を表敬訪問した際、大切な金メダルをいきなり噛まれてしまいます。テレビやネットで繰り返し目に入ってきた「噛みつき&不気味な笑顔」の映像は、マイナスの意味での強烈なインパクトに満ち満ちていました。 あまりにも無礼な行為に対して、たちまち非難が殺到。さまざまな競技のアスリートたちからも、怒りの声が上がります。オリンピックが終わっても、河村市長への逆風はやみそうにありません。15日に名古屋市内で行なわれる東京パラリンピックの聖火行事への出席は、「混乱を招きかねない」という理由で見合わせることになりました。 組織委員会は11日、後藤選手のメダルを新品に交換すると発表します。ただ、噛まれたメダルは表彰式で授与されたものだとして、後藤選手は交換を辞退する意向を示していたとか。交換しないのも気の毒だし、交換すれば解決という話でもありません。河村市長は、けっして取り返しのつかない罪深いことをしてしまったと言えるでしょう。 ただ、こういうわかりやすい“悪役”に怒ったり呆れたりして、目先の満足感を覚えるのは簡単です。私たちオッサンとしては、河村市長を反面教師や他山の石にして、同じ種類の恥ずかしい行為をしないための教訓を得たいところ。あなたのまわりにも、「河村たかし的な要素」を持つオッサンがいるのではないでしょうか。自分の中にも、知らないあいだに「小さな河村たかし」が棲みついているかもしれません。 悲劇を繰り返さないために、恥ずかしくてみっともなくて情けないオッサンにならないために、けっして真似してはいけない3つのダメポイントを押さえておきましょう。【河村市長に学ぶ・恥ずかしいオッサンにならたいための3つのダメ】その1「相手が若い女性となると遠慮なく偉そうな態度を取る」その2「“強い相手”に怒られた途端にたちまち手のひらを返す」その3「オッサンのお茶目は本人が思っているほど面白くない」●その1「相手が若い女性となると遠慮なく偉そうな態度を取る」 アスリート仲間からの怒りと抗議の声の中で、ひときわ迫力たっぷりだったのが、柔道男子100キロ級で金メダルを獲得したウルフ・アロン選手のツイートです。シンガーソングライターの七尾旅人さんが、メダルを噛んでいる市長の画像とともに「河村たかし、シンプルに気持ちわるい。ウルフ・アロンのメダルだったら絶対に噛んでないだろうし。」とツイート。ウルフ・アロン選手はそれを引用して、こうツイートしました。「もし噛んだら…この先はやめときます。」 河村市長が本人に無断でメダルを噛んだのは、間違いなく、後藤選手が若い女性だったから。七尾さんが言うように、いかつい男性選手だったらそんなことはしていないでしょう(もし噛んだら…どうなるか見てみたい気もしますが)。そこには、セクハラやパワハラや年長者の甘えなど、オッサンのダメ要素が凝縮されています。しかも当人は見事に無自覚で、記者会見で問題点を指摘されてもピンと来ていませんでした。 相手が若い女性とみると、たちまち偉そうな態度を取ったり、頼まれてもいないのにものを教えようとしたり、当然のようにおもてなしを要求したりするオッサンは、掃いて捨てるほどいます。いや、身に覚えがないオッサンのほうが少ないでしょう。今まで大丈夫だったからといって、これからも大目に見てもらえると思ったら大間違い。まわりのためにも自分のためにも、すぐに心を入れ替えましょう。●その2「“強い相手”に怒られた途端にたちまち手のひらを返す」 今回の件で何が恥ずかしくてみっともなくて情けなかったかと言えば、後藤選手が所属するトヨタ自動車が「不適切かつあるまじき行為」などと抗議のコメントを発表した途端に、たちまちビビッて態度をコロッと変えたところ。水戸黄門の印籠を見て、それまで威張っていた悪代官があわてて土下座する場面を思い出した人も多いでしょう。 河村市長が批判を受けて翌日に発表した謝罪(?)は、こういう内容でした。「最大の愛情表現だった。金メダル獲得は、あこがれだった。迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」 見事なまでにナメたコメントです。この期に及んでの「愛情表現だった」はセクハラの上塗りだし、「~であれば」は、自分は悪くないと思っている人の常套句。ほかの政治家もよく使いますが、本来は謝罪で使ってはいけない言い回しです。最後の「ごめんなさい」も、被害者や世間の神経を逆なでしようとしているとしか思えません。 ところが、偉大なるトヨタ様がお怒りだとわかった途端、「立場をわきまえない極めて不適切な行為であったと猛省すべきと痛感しており」といった真面目な謝罪文を作成。トヨタ本社にお詫びに向かいます(門前払いされたようですが)。誰に何を言われても「そんなに怒らんでちょーよ」という態度を貫く気骨があるなら、まだマシだったんですけど。 ただ、自分より立場が弱い相手には威張り散らすけど強い相手には媚びへつらうオッサンは、これまた掃いて捨てるほどいます。河村市長のフリ見て我がフリ直しましょう。●その3「オッサンのお茶目は本人が思っているほど面白くない」 河村市長の呆れた行動は、今回に限ったことではありません。今年4月にも、特別展で名古屋城の「金のしゃちほこ」にかじりついていました。おそらく「自分がお茶目なことをすれば、みんな喜んでくれる」という自信があるのでしょう。 しかし、河村市長に限らず、オッサンのお茶目は本人が思っているほど面白くありません。まわりが笑ってくれるのは気をつかっているからか、あるいはお情けです。自分が今より20歳若かった頃、20歳年上のオッサンがお茶目なことをした場面で、はたしてどう感じたか。その時の居たたまれなさや痛々しいものを見たつらさ、作り笑いをする苦々しさを思い出せば、今の自分がどう見られているかわかるはずです。 さらに忘れてはいけないのは、愛知県知事のリコールをめぐる署名不正事件が明らかになったときに、河村市長がどんな見事な逃げっぷりを見せたか。あれだけ先頭に立って旗を振っていたのに、何の臆面もなく「自分は関係ない」「自分は被害者」とまで言い放ちました。そこまでの面の皮の厚さは、並のオッサンにはとうてい真似できません。 にもかかわらず、4月の市長選挙で5回目の当選を果たします。地元にしかわからない事情はきっとあるにせよ、全国の多くの人の頭上には「えっ、なぜあの人が当選?」という大きなクエスチョンマークがいくつも浮かびました。 市長選の際に対立候補に投票した名古屋市民はもちろん、河村市長に投票した市民の中にも、今回の件で「あの人物が市のトップなのは恥ずかしい……」と思い始めた人がいるかもしれません。そういう場合は、いい方法があります。河村市長に(あくまで例えとして)どんどん噛みつけば、新しいのに交換ということになるかも。まあ、かなり噛まれ強そうではありますけど。
2021.08.15 16:00
NEWSポストセブン
河村市長
河村市長に噛まれた金メダル交換に、後藤投手の意向はどれだけ反映されているのか
 本人の思いとは裏腹に日本中を震撼させることになったメダル噛み事件。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。 * * * キモい、グロい、気持ち悪い、臭い、汚い、不衛生すぎる、吐き気がする、ゾッとする、正視に耐えない……。 以上は、河村たかし名古屋市長がやらかした例の行為に対し、ネット上で噴出した言葉の代表的なところだ。これらに共通しているのは、圧倒的な生理的嫌悪感である。河村市長が表敬訪問に訪れた女子ソフトボール日本代表の後藤希友投手の金メダルに無断で噛みつき、その様子が動画ないし写真で広く知らされるや、たちまち悲鳴に近い非難の言葉が湧きまくった。 たしかに私もその動画を目にした瞬間、このオヤジ何をやらかしているんだと驚いたし、全体の半分ほどが口中に押し込められた金メダルにきっと付着してしまったであろう唾液を想像して、汚ねえな、嫌なもん見せられちまったなと感じた。後藤投手が気の毒だとも思った。 しかし、少し考えて、こうも思った。もしメダルに嚙みついたのが河村市長ではなく、すばらしく爽やかなイケメン俳優であったとしたらどうだろう。例えば、佐藤健なら? 斎藤工だったら? もしくは山下智久とか? 噛みつき方にもよるが、いずれの場合も、生理的嫌悪感は相当薄まるのではないだろうか。それが佐藤なり斎藤なり山下なりのファンの感覚だったら、金メダルにさらなるプレミアがつくぐらいの話になりかわりはしないか。 河村市長は72歳である。上記のような若い男たちとの比較はあんまりだと言うのなら、竹野内豊(50)ではいかが? 西島英俊(50)は? まだ若すぎるか。ならば、いささか癖は強くなるが、舘ひろし(71)だったらどう? 人によって好悪の抱き方が違うのは当然だとしても、数多くのアンケートをとれば、噛まれても「気にならない」「むしろ嬉しい」などの回答がかなり多いはずである。なぜなら、上記した6人の俳優全員は『週刊女性』の「抱かれたい男ランキング」で上位に食いこんだ面々だからである。 ちなみに同誌は「癒されたいランキング」も発表しており、そこにランクした芸能人に明石家さんま(66)がいる。さんまのあの前歯でメダルが噛まれたらどうか。笑って済ます人のほうが多いのではないか。同じくランクインしている所ジョージ(66)だとしても然りであろう。 要は、生理的嫌悪感は行為そのもので決まるのではなく、例えば噛む人によってまったく好悪がかわってくる相対的なものだということだ。ゆえに、河村市長が後藤投手の金メダルに無断で噛みついたことはなるほど非常識なのだが、その非常識さゆえに大バッシングされたのではなく、市長の見た目や佇まいや醸し出す雰囲気などが、残念ながらマイナス評価のほうに傾きやすい部類だったので悲鳴があがったのだ。市長の権力をいいことに、なんたることをしたのだ、キモい、グロい、気持ち悪い……と想定外の大不評を買ったのである。 でも、そんなふうに相対的な問題なので、肝心の当事者である後藤投手が、実際にどう感じていたのかは分からない。噛みつきの現場では、リアクションとして「ワハハ」と笑っていたが、それは恐らく彼女の社会性がそうさせたのだろう。その後、メダルを持ち帰って、噛まれてしまったことをどう感じたのかは、彼女がその思いを発信でもしない限り、当人以外には決して分からない。 しかし、私を含めた我々の大半は、そんな話などおかまいなしに、圧倒的な生理的嫌悪感を示し、彼女に同情した。そして、そのうちの少なからずがネット上で事態を嘆き、河村市長に罵詈雑言を投げ続けた。 その罵倒の勢いがあまりにも凄まじかったからであろう。マーケティング感覚に優れた後藤投手の雇い主でもあるトヨタが、「事件」の翌日である5日、さっそく「金メダルはアスリートの長年にわたる、たゆまぬ努力の結晶。またコロナ禍においてメダル授与ですら、本人が首にかけるという状況下においての今回の不適切かつあるまじき行為は、アスリートへの敬意や賞賛、感染予防への配慮が感じられず、大変残念に思う。河村市長には、責任あるリーダーとしての行動を切に願う」という抗議のコメントを出した。 トヨタは言うまでもなく名古屋圏に君臨する巨大企業であり、東京五輪の大スポンサーでもある。5日に河村市長が囲み取材で謝罪をしたのは、トヨタの「力」に危機を感じたがゆえのことに違いない。その後、11日までにIOCが新しい金メダルに交換することを決めたのも、やはりトヨタの「力」だと思う。 12日に河村市長が記者会見を開き、また謝罪をし、記者との問答では吊し上げのようなことになっていたが、このような大騒動に発展させたのは、トヨタの「力」、そしてその大企業のセンサーを反応させた我々の声である。集団ヒステリーと化した声、声、声。 河村市長の噛みつき行為は、「きさくな72歳」という自らのキャッチコピーになんの疑いもなく、安易に実行した愚行だ。市長は、オヤジやジジイという属性が、どれだけ生理的嫌悪感を発動させやすいものなのか、あまりに理解が足りなかった。抱かれたかったり癒されたかったりする一部の芸能人などは飽くまで例外で、一般的な中高年男性はただそれだけでマイナスの存在なのである。そのぐらいの自覚がないと、キモい、グロい、気持ち悪い……と受け取られる言動をしかねないのである。 今回の件で、河村市長はその重みを学んだだろう。そして、次の市長選に出馬するのなら、そのハードルは非常に高いものとなるだろう。民意はときに理不尽で残酷なのだ。 それはそれなのだが、気になる点が一つ残る。それは後藤投手本人の気持ちだ。 11日に配信された日本テレビ系(NNN)のニュースによると、〈後藤投手はかまれたメダルについて、チームで勝ち取って表彰式で授与されたものだとして、新しいメダルとの交換を辞退する意向を示していた〉という。〈しかし、萩生田文科相が「教育上非常に良くない。人の大切なものを口にいれるなんて」と問題視するなど、各方面からメダルの交換を求める声が高まり、交換が決まった〉らしい。 この話が事実であれば、後藤投手のメダルはまた勝手な他人がいじっている。彼女が辞退の意向を示したのは、市長や世間に遠慮したからかもしれないが、噛まれたことをたいして気にしていなかったからかもしれない。生理的嫌悪感は相対的なものなので、それを感じる人によって本当にまるで違う。 ゆえに、本人が示した意向こそを最大限尊重すべきなのだが、メダル交換という結論にどれだけそれが反映されているのか。噛んだ側も、事態を収拾する側も、メダルを獲得した本人の意向を聞こうとしないオヤジたちばかりのような気がしてならない。そういうオヤジの性質ほど嫌われやすいのに、である。
2021.08.14 16:00
NEWSポストセブン
ソフトボール女子五輪代表の後藤希友投手(右)の表敬訪問を受け、首に掛けてもらった金メダルにかみつく名古屋市の河村たかし市長(時事通信フォト)
河村市長のメダル齧り 「なにが悪いの?」と居直るおっさんは普通にいる
「亀の甲より年の功」といわれ、年長者の経験は貴重なので尊重すべきと言われるが、その経験が時代に合わなくても自分の流儀で振る舞い続ける「おっさん」が各地で迷惑を振りまいている。名古屋市の河村たかし市長が、表敬訪問した金メダリストのメダルを、いきなり噛んだことが非難を集めているが、似たような市井の「おっさん」のハラスメントに満ちた言動に悩まされた体験を思い起こした人も多いだろう。俳人で著作家の日野百草氏が、ジェネレーションギャップという言葉だけでは片付けがたい「おっさん」によるハラスメントの被害についてレポートする。 * * *「河村さんね、あれ、そんなに怒ることかね、あの人も楽しませるためにやったことでしょ」 北関東の小さな会合、筆者は耳を疑った。区長経験もある男性(70代)と世間話に及んだ際に出た言葉だ。彼は地主でガソリンスタンドなど手広く経営しているという。区長というのは政令指定都市の区長というわけではなく、行政区設置条例で住民たちが決めて市町村から委託される立場、大きな町内会長みたいなものだ。筆者もあまり馴染みがないのだが、一部地域に設置されている独特の制度である。「選手は怒ってないよね、あんたたちみたいな若いのがすぐ騒ぐ」 彼とは初対面なのだが、とにかく不遜である。初対面の上にこちらは来賓の立場である。筆者が年下で彼の子どもと同い年ぐらいというのもあるのだろうか。この世代のおっさん(以降、老人ではないかという意見もあろうがおっさんで統一)の一部は自分の子どもと他人の子を区別できなかったり、年下というだけで一社会人である年下を尊重できなかったりする。彼は地方の大学を卒業後、家業の農業をガソリンスタンドに鞍替えした。鉄道の役に立たない北関東、モータリゼーション真っ只中の昭和を切り抜けてきたという。「私は人に使われたことないからね、まあ人に使われるような男はだめなんだ」 自慢話を右から左に流し、先ほどの話を蒸し返してみる。名古屋市の河村たかし市長(72歳)が東京オリンピックで金メダルに輝いたソフトボールの後藤希友選手に表敬訪問を受け、あろうことか金メダルを豪快にメダルの紐ごと噛んでみせた「事案」だ。市長に失礼だよ、彼は市長なんだよ「楽しいじゃないか、市長がパクっと食べちゃうなんて、あれ、Qちゃんもやったでしょ、細かいことはいいんだよ」 Qちゃんとは高橋尚子選手のことか。メダリストがメダルを齧るパフォーマンスといえば、日本ではアトランタ五輪柔道・中村兼三選手の金メダルを噛んだことが始まり(カメラマンの提案によるもの)とされているが、有名なシーンといえば彼女のスマイルとメダルを齧る仕草だろう。しかしメダリストは自分が手に入れたものなのでどうしようと構わないが、河村市長はメダリストでもないし、そもそもメダルは彼のものではない。「市長に失礼だよ、彼は市長なんだよ」 こういう人、フィクションならどれだけ救われるか。令和になってもこの手のおっさんは日本各地に実在する。恥ずかしい話、筆者も千葉県の野田市に生まれたからよくわかる。故郷の恥を晒すのもアレだが、野田市を擁する東葛地域のおっさんもこんな感じだった。パワハラモラハラあたりまえ、女は誰であろうと全員下で年下は従うもので子ども(とくに他人の子)に人権なんてない、この世代は大なり小なりそんなカルチャーのおっさんである。戦争はほとんど経験せず、高度成長とバブルを謳歌してほぼ逃げ切った世代でもある。「なんでって、こっちが聞きたいよ、なにが悪いの?」 筆者は冷静に「どうしてそう思うのか」を聞いてみたが具体的な言葉は聞けなかった。重ねて断っておくが、おっさん全員がこんな人、まして河村市長レベルでないのは当然である。しかし、大半のおっさんが時代に順応することなく地域に、家庭に君臨している。このでっかい版が河村市長だろうか、彼も大学を出て河村商事という古紙回収業を継いでそのまま議員となった。政治的には世襲ではないが、出自は父親から自営を継いだおっさんで、ガキ大将のように田舎長男坊として生きてきた人だ。「汚れたとかひどいね、口に入れただけじゃないか」 素朴に「自分の大事なものを他人に汚されたら嫌じゃないですか」と試してみたが全否定された。市長は偉いので、口に入れて汚しても構わないということで、偉いか偉くないか、メダリストかそうでないかはともかく、全力を尽くしたアスリートのほうが尊いと思う筆者とはまったく価値観が違うらしい。素朴にそれは「悪いこと」だと思うのだが。「まあ若いんだよ」 そしてこのドヤ顔である。年齢マウントもおっさんの特徴である。この年齢マウントもまた謎で、大谷翔平選手に会っても面と向かって「キミはまだまだだな、私など経営者として……」などと本気で言いそうだ。張本勲のつもりだろうか。彼もオリンピック期間中、女子ボクシングフェザー級金メダリスト入江聖奈選手に対して「こんな競技好きな人がいるんだ」とテレビで放言し物議を醸した。こうしたおっさんの特徴は、年下や女性とみると誰であろうが一切リスペクトしない点にある。まるで動物のように本能的なマウントをかましてくる。金メダリストであろうとも、年下の女は自分より下で、大事なものをぞんざいに扱っても構わない、競技を貶めても構わない、むしろウケると思っている。 筆者は別の機会に同じ地域の40代女性に話を聞くことができた。フェイスブック繋がりでもあるが、彼女もまた、こうしたおっさんの被害者だった。「ある70代男性の話ですが、私の子どもを勝手に抱いて、顔中にキスしてきたんです。まだ赤ちゃんとはいえ気持ちのいいものではありません。地元で生まれた子どもは我が子同然と言われても、虫歯だって伝染るかもしれないし」 この話、悲しいかな筆者周辺にも複数の被害者がいた。勝手に抱いてチューをする。筆者も野田で幼少期はいきなり見知らぬおっさんにチューとかされて「かわいがられてよかったね」などと言われたものだが昭和の話、ましてこのコロナ禍、洒落にならない。ある意味、河村市長の身勝手な言い分「最大の愛情表現だった」という弁解と根っこは同じだろうか。「ぶちゅぶちゅする義父とか嫌ですよ、やめてくれというのに聞かないんです」 これまた別の女性、彼女は書いても構わないというので書くが彼女の夫の実家は茨城県西部、田舎だが山奥と言うほどではない。しかし昔ながらの土着のおっさんは社会規範のアップデートができていないし、年齢的にする気もないだろう。叱る人もいないから、ある意味こうしたおっさんも無敵の人だ。誰にも従う必要のなくなった無敵の年金おっさんの一部が近所で、家庭で暴君のように振る舞って身近な人を困らせている。あのような男性は権威に弱いし相手を見てペコペコする 個々のおっさんの話ともかく、このオリンピックでは森喜朗を筆頭におっさんのやらかしばかりが目立った。彼らが選んだ連中もまたやらかしてはオリンピック開幕前に消えていった。そうしてついに、そのおっさんの列に河村市長も加わった。その辺のおっさんでも迷惑なのに公職、要職の方々ばかり。理不尽に女性を誹謗したり、太っているからと女性タレントをブタに仕立てようとしたり、表敬訪問のメダリストをぞんざいな扱いでウケ狙い――もはやこんなおっさんたち、退場願うしかないのではないか。まして困ったことに先の市井のおっさんたちと違い、彼らは年金者ではなく現役である。「でもね、あのような男性は権威に弱いし相手を見ます。ペコペコします。老人ホームの中でだってそうですよ。男性は施設内でも昔自慢のマウント合戦ですから」 懇意にしている福祉施設の女性談。なるほど、「ごめんなさい」と高をくくったような謝罪のはずが後藤選手の所属先であるトヨタ自動車に抗議された途端に平伏なのだからそうかもしれない。大トヨタに怒られればコメツキバッタのように謝罪する。どこまでもマウントでしかものを考えられない生き物が、一部の旧人類たるおっさんである。 ロイター通信は「Kawamura had turned Goto’s gold medal into a germ medal」(「河村が金メダルを菌メダルに変えた」)と報じた。こうしたおっさんの問題が、笑い話ではなく国益を損なう問題にまで発展している。その後、後藤選手に対するセクハラ発言まで公開された。散々報じられているので中身はいちいち書かないが、まあ、こういうおっさんは普通にいる。ただ彼が、日本を代表する都市の市長であるという問題があるだけだ。「あと4年も(任期が)あるなんて悲しいですね。誰ですかあのような方に入れたのは、私は入れておりません」 名古屋市内に住む通信制大学時代の元学友は電話口で心底嫌そう。彼も高齢者だが河村みたいなことはしない。そもそもこんなのは河村市長やごく一部だけで、改めて重ねるが多くの方はちゃんとしている。それにしても任期はまだ4年ある。名古屋市民はもちろん、選んだはずもない他の愛知県の市町村民にとっても4年は長そうだ。 一部のおっさんが社会規範をアップデートできないまま、いまだに古い価値観で日本の国際的な評判を落とし続けている。国益を損なうおっさん――オリンピックは選手の奮闘以外あんまりなイベントだったが、日本のために退場願いたい旧世代のおっさんたちをあぶり出したことは評価すべきだろう。そして我々下の世代も、次代の子どもたちに旧人類の価値観を持ち越さないようアップデートし続けなければならない。 それにしても還暦過ぎてこんなおっさん、というか人間にはなりたくないものである。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)ほか。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。
2021.08.12 16:00
NEWSポストセブン
9月総選挙の注目ブロック 東京はれいわ旋風、東海は乱戦
9月総選挙の注目ブロック 東京はれいわ旋風、東海は乱戦
 緊急事態宣言が全面解除された後の6月1日と10日の2回、麻生太郎・副総理兼財務相は官邸で安倍首相とサシの会談を持った。 麻生氏は夏の内閣改造で二階俊博・幹事長と菅義偉・官房長官を更迭し、新体制のもとで9月に一か八かの解散・総選挙を打つ決断を安倍氏に促したというのである。 本誌・週刊ポストは選挙分析に定評のある政治ジャーナリスト・野上忠興氏の協力で「9月解散・総選挙」となった場合の小各党の議席予測を行なった。その予想獲得議席数を見ると、自民党は前回の284議席が228議席となり、日本維新の会が11議席から34議席へと大幅躍進する、といったものだった。公明党は26→29で、野党連合(立件民主+国民民主)は105→157、共産党が12→13、社民党が2→2、れいわ新選組が0→5。全国でどんな動きが起きるのか。注目ブロックの情勢をみていこう。野上氏の分析だ。■北海道ブロック「自民壊滅」 北海道は鈴木直道・知事が最も早く独自の緊急事態を宣言したが、その後、感染の第2波に襲われて収束が遅れた。知事の評価は高いが、農業・水産業など道経済への影響が深刻で政府批判が強く、与党大苦戦が予想される。自民党で議席確保が有力なのは7区と12区くらい。10区の公明党は苦しい。12選挙区のうち10議席で野党候補が競り勝つドミノ現象の可能性がある。■東北ブロック「東北の乱」再び 東北ブロックでは宮城の都市部(1区、2区)、政府の陸上イージス配備問題で批判が強まった秋田は全選挙区で自民が苦戦、森雅子・法務大臣(参院)の地元、福島でも5選挙区で自民は1議席と与野党の議席逆転が相次ぐとみられる。かつての「東北の乱」の再来か。■東京ブロック「れいわ旋風」も メロン配布問題で辞任した菅原一秀・前経産相、IR汚職の秋元司・代議士(現在は離党)など自民党の不祥事議員が再選を目指すが、風当たりは非常に強く、そのあおりで石原伸晃、宏高兄弟など軒並み苦戦が予想されている。公明党は太田昭宏・前代表が引退して別の候補を擁立するが、維新が対立候補を擁立する動きがある。公明vs維新の首都決戦となれば注目だ。都知事選に出馬表明した山本太郎氏率いるれいわ新選組も選挙区・比例代表で議席獲得の可能性があり、維新、れいわ、立憲・国民連合が躍進して首都で自民党は衰退へ。■東海ブロック「河村氏出馬で乱戦」か 愛知はトリエンナーレ問題で大村秀章・知事とバトルを展開している河村たかし・名古屋市長が衆院選に転出するかが注目される。河村氏が大村批判派の維新と組めば、自民が票を食われ、東海ブロックに維新が本格進出する足がかりとなる。■近畿ブロック「維新と公明の決戦」 維新が勢いを増す近畿ブロックは公明党にとっても小選挙区で6議席(大阪4、兵庫2)を握る一大拠点だ。これまで維新は公明に対立候補を立てなかったが、9月解散になると、維新は悲願の「大阪都構想」の住民投票と衆院選のダブル選挙に持ち込む可能性がある。そのとき、公明党が自民党とともに都構想反対に回れば、維新が公明に対立候補をぶつけて正面衝突が起きる。現在の勢いでは自民壊滅、公明党も最悪の場合、6議席の大半を失う可能性がある。■中国ブロック「河井氏出馬なら自民ショック」 自民党が強い地盤を誇る中国ブロックの焦点は河井克行・前法相と案里夫妻(ともに現在は離党・逮捕)の地元の広島だ。検察の捜査で自民党のイメージが大きくダウンしている上、河井克行氏が起訴されても無罪を主張して出馬した場合、自民はブロック全体で票を減らすことになりそうだ(河井案里氏は参議院議員)。 議席予想では、自民党は56議席減の大惨敗で228議席に減らし、単独過半数を割り込む可能性が高い。公明党も29議席から26議席に減少。こうした批判のうねりが全国に広がれば、自公は予測よりさらに議席を減らす可能性もある。 破れかぶれ解散の後、安倍首相は惨敗の責任をとって「レガシー」を残せないまま8年間の長期政権を終えて退陣へ。そして自民党総裁選でポストコロナ時代の新しい総理選びと政治の枠組みづくりが始まるはずだ。※週刊ポスト2020年7月3日号
2020.06.23 07:00
週刊ポスト
吉村知事 国民の支持あれば細川護熙氏のように総理への道も
吉村知事 国民の支持あれば細川護熙氏のように総理への道も
 新型コロナを巡る安倍政権の迷走が国民を失望させている。自民党内の人材不足も明白になり、本来ならばあり得ないはずの“待望論”まで出始めた。この国の政治不信もまた、危機的なレベルに達している。 危機の時ほど、政治家は真価を問われる。新型コロナ対策の「決断と実行」で存在感を高めたのが全国の知事たちだ。 鈴木直道・北海道知事は国に先駆け2月に外出自粛を要請。小池百合子・東京都知事は「ロックダウン」を示唆し政府の尻を叩いて緊急事態宣言を出させ、吉村洋文・大阪府知事は「大阪モデル」で常に政府に先んじる一手を打った。 その中でも「次の総理」への待望論が高まっているのが44歳の吉村氏だ。全国的に感染が拡大したとされる3月の3連休(20~22日)に大阪・兵庫間の移動制限を要請したのを皮切りに、国の新型コロナ特措法を「誰が最終責任者なのかを曖昧にしている責任逃れ法律」と批判。自粛要請に応じないパチンコ店の名前を公表し全店休業させるなど、知事の権限を最大活用した。そうしたリーダーシップを見せたことから「将来の総理に」といった待望論も出ている。 ただ、いくら国民が望んでも、吉村氏の総理への道は容易ではない。知事から総理になるには、国政選挙に出馬して国会議員となり、国会で多数派を握って首班指名で勝利する手順を踏まなければならない。自民党では知事から国会議員になっても、国政に出た時点で1回生の“陣笠議員”としての下積みから始まり、当選回数を重ねなければ党の幹部にはなれない。政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏が語る。「吉村氏が総理を目指すなら国政に出て日本維新の会の党首になり、さらに総選挙で過半数を取る必要がある。道のりは遠い。永田町の常識だけで言えば、知事からすぐ総理というのは現実的ではない」「しかし」とこう続ける。「国難に直面した今、“ポスト安倍”がいないからと、幹部から消去法で選ぶという自民党の慣わしは通用しない。過去、国会議員が不甲斐ないときは、地方からムーブメントが起きた。『東京から日本を変える』といった石原慎太郎氏や大阪維新を旗揚げした橋下徹氏、減税日本の河村たかし氏など、地方の首長の動きが国政を動かした。国民の支持さえあれば、地方のリーダーから総理の道が拓けることもある」 憲政史上、知事から一足飛びで総理に上り詰めたのは細川護熙首相ただ1人だ。細川氏は熊本県知事から日本新党を結成してブームを起こし、自民党分裂の政界激動の中、国政進出わずか1年で総理に就任した。 折しも、長期政権を誇った安倍内閣はコロナ対応で支持率が低下し、自民党には人材が枯渇、国民は新しいリーダーを望んでいる。細川氏が登場した政治状況と似てきた。政治ジャーナリスト・角谷浩一氏は「吉村氏の資質は十分」とみる。「首長として役所を率いた経験は重要です。安倍首相は総理就任前に官房長官は経験したが、大臣として役所を率いたことはなかった。その点、吉村氏はまだ若いが大阪市長、大阪府知事として大きな役所を動かしてきた。それは総理の仕事に直結する。永田町の政治的な修羅場をくぐった経験はなくても、永田町の論理に捉われない政治ができる可能性を持っている」 吉村氏が総理になるシナリオは、維新の“創立者”である橋下徹氏による下準備も済んでいる。地域政党「大阪維新の会」を結成し国政に進出させ、この10年で国会に足場を築いてきた。しかも、いまや日本維新の会の支持率は吉村人気で野党ではトップだ。次の総選挙で野党第一党に躍り出る可能性は十分ある。「吉村氏には次の総選挙で維新を中心に地域政党を糾合して自民党に挑むか、あるいは選挙で自民党を過半数割れに追い詰めたうえで維新と自民の連立を組んで首相ポストを要求するという選択肢も考えられる」(鈴木氏) ゼロから日本新党を作った細川氏より、日本維新の会という足場がある吉村氏のほうがチャンスは大きいわけだ。※週刊ポスト2020年6月5日号
2020.05.26 16:00
週刊ポスト
大井川鉄道では毎日、SLが運行されている。
SL受難の時代 高額な維持費に加え関わるスタッフも高齢化
 観光にイベントに、SL(蒸気機関車)が人気だ。乗車するのも、走る様子を見るのも人気で、SLを走らせたいと願う地域は少なくない。ところが年々、SLを実際に走らせることはもちろん、車両の保存も難しくなっている現実がある。北九州市が若松駅前に展示してきたSLのメンテナンス継続が難しくなったため、譲渡先を2019年12月25日まで公募していたことも話題になった。継続して保存してくれる先は見つかったのか、全国でSLの保存はどのような状況にあるのか、ライターの小川裕夫氏がレポートする。 * * * 全国各地を走っていたSLは、昭和40年代から鉄道の電化が進められたことによって姿を消した。鉄道ファンではなくても、SLを懐かしむ人は少なくない。そのため、観光の目玉としてローカル線ではSLが頻繁に運行されてきた。 SLを観光の目玉にする先鞭をつけたのは、静岡県の大井川鉄道と山口県の山口線だ。大井川鉄道は1976年に、山口線は1979年にSLの運転を開始。これらの成功を受け、各地でもSL運転が相次ぐ。 近年、東武鉄道がSL運転を始めたり、若桜鉄道がピンク色のSLを運行するなど、SLは依然として根強い人気を保っていると思われていた。しかし、そうした人気とは裏腹にSLは水面下で危機を迎えている。 昭和40年代から50年代にかけて、多くのSLは役目を終えた。引退したSLの多くは処分されたが、博物館や自治体、愛好家たちが結成した保存会などに引き取られたSLもあった。引き取られたSLは、博物館や公園などに保存・展示された。処分を免れて幸せな余生を送っていたはずだったが、歳月の経過とともに問題が浮上する。 九州鉄道記念館がある福岡県北九州市は、鉄道の街という歴史を有する。市内の若松駅前にある久岐の浜広場には、旧国鉄から貸与されたSLが保存・展示されていた。石炭産業で栄えた北九州市は、石炭輸送に活躍したSLを保存・展示することで郷土史を伝える役割を果たしていた。しかし、メンテナンスの手が回らず、老朽化が目立つ状態になっていた。このほど、市は保存・展示を諦めて譲渡することを決定した。「先だって譲渡先を公募していましたが、申し込み締め切り期限の12月25日までに県内から1者、県外から1者、合計2者から申し込みがありました」と話すのは北九州市若松区まちづくり整備課の担当者だ。 SLの譲渡先は2020年1月中に選定委員会によって決定する。2者からの応募があったことで、ひとまずSLが広場で朽ちていく運命は免れた。しかし、SL受難を思わせる衝撃的な事態はほかの地域でも発生している。 このほど、京都府与謝野町にある加悦(かや)SL広場が2020年3月末で閉鎖することを発表した。加悦SL広場には、SLをはじめ鉄道史を彩ってきた車両が保存・展示されている。 保存・展示された車両は、定期的にメンテナンスしなければすぐに腐食してしまう。保存・展示車両にメンテナンスは欠かせないが、その費用は重い負担になる。特に、SLの保存には莫大な費用がかかる。また、メンテナンスを受け持つ人員も必要になる。加悦SL広場のメンテナンス担当者はたったの一人。一人で車両の維持・管理を受け持つことは不可能だろう。加悦SL広場の閉鎖は、苦渋の決断でもあった。 加悦SL広場のたった一人でメンテナンスを受け持つ体制も大変な話だが、公園などに保存されているSLはボランティアやNPO団体にメンテナンスを依存していることが多い。しかし、ボランティアスタッフの多くが高齢化により引退し、メンテナンスを受け持つ人間は少なくなった。そのため、各地のSLは放置されっぱなしになっている。 各地のSLが姿を消すという危機感が広がる中、それでもSLの保存・展示を模索している団体もある。名古屋市にある名古屋市立科学館も、粘り強くSLの保存・展示に取り組んできた。名古屋市科学館の担当者は言う。「それまで当館のSLは敷地内に展示しているだけでした。3年前に動態保存を含めて、さまざまな活用を模索するべく、大阪の業者へ点検に出しました。そのため、現在は敷地内に線路だけ残されている状態になっています」 科学館に保存・展示されていたSLは、それまで化学メーカー・石原産業が四日市で資材輸送・工員輸送のために使用していた。不要になったため、科学館がSLを譲り受けることになったが、当初は敷地内で保存・展示するだけだった。事態が大きく変わったのは、名古屋市の河村たかし市長による意向からだった。 SLに強い思いれを抱く河村市長は、常々「あおなみ線でSLを運行したい」と発言していた。2013年にあおなみ線の一部区間でSL運転をイベント的に実現。あおなみ線を走ったSLは科学館に保存・展示されていた車両ではなく、JR西日本から借りてきた。わずか2日間のイベント的なSL運転だったが、大盛況に終わった。 SL運転の成功を機に、名古屋市は定期的にSL運転をできるか検討。しかし、SLを運転するには、クリアしなければならない課題が多かった。それらをクリアできないため、SL運転計画は頓挫してしまう。その後、名古屋市はSL運転から動態保存に方針を転換。科学館前に保存・展示されていたSLを活用することが模索された。 SLを動態保存する手法は大まかに2種類ある。蒸気機関によって完全に復元する手法と圧縮空気によって動かす手法だ。 蒸気機関によって完全復元するには、SLが走れるだけの広い敷地が必要になる。また、煤煙や騒音、振動といった周辺環境への配慮も求められる。費用も莫大になる。クリアしなければならないハードルは多い。 多くのSLを保存・展示している京都鉄道博物館は、短い区間ながら敷地内でSLの運転をしている。京都鉄道博物館は2015年にリニューアルして現在の館名に改称されたが、前身は梅小路蒸気機関車館という博物館だった。その名前からもわかるように、同館は蒸気機関車が主役の博物館であり、ハード・ソフト両面でSLの保存・展示には好環境が整っていた。その系譜を継承する、現在の京都鉄道博物館がSL保存・展示に強いのは当然の話なのだ。 しかし、ほかの施設でSLを保存・展示することは容易ではない。そのため、蒸気機関ではなく圧縮空気による再現を選択する施設は少なくない。圧縮空気での再現なら、煤煙や振動、騒音といった周辺環境への諸問題はクリアしやすい。圧縮空気による再現は完全な復元とは言い難いが、それでも和歌山県の有田川鉄道公園や岐阜県の明知鉄道は圧縮空気でのSL運転を再現し、人気を博している。「予算との兼ね合いもあるので、蒸気機関か圧縮空気のどちらになるかは検討中としか申し上げられません。しかし、どちらになってもVRなどの科学技術と組み合わせるなどして、科学館の特性を活かした体験ができる仕組みを考えています」(前出・科学館担当職員) SLが全盛期だったのは、半世紀も前になった。すでに、SLに乗車経験がある層は少なくなり、それに伴ってSLが絶対的な観光の目玉になる時代ではなくなっている。 SLとの新たな向き合い方を考えなければならない時にきているのかもしれない。
2020.01.04 07:00
NEWSポストセブン
「表現の不自由展・その後」に展示された彫刻家キム・ソギョン氏、キム・ウンソン氏夫妻の「平和の少女像」(時事通信フォト)
クロ現「表現の不自由展」特集で痛感した「NHKという病」
 表現の自由をめぐる議論が熱を帯びるのは、情報の流れとリテラシーの変化による部分も大きい。作家・ジャーナリストの門田隆将氏が指摘する。 * * * 9月5日夜10時、NHK「クローズアップ現代+」で「『表現の不自由展・その後』中止の波紋」が放映された。 私は、展示中止から1か月以上経ってからの番組なので、ある1点に注目していた。それは、展示作品を番組が「正確に取り上げるかどうか」だった。 というのも、この問題では、展示作品を正確に伝えた「インターネット」と、都合の悪いものは報じず、一部だけを報じた「新聞とテレビ」とに明確に分かれていたからだ。 インターネットだけがこの1か月、展示された作品群の中身をきちんと伝えたが、私自身、展示中止になる当日の8月3日、ぎりぎりで観にいくことができた。そしてその作品群の明確なメッセージ性には驚かされたものである。 それは、ひと言でいうなら「反日ヘイト」と「皇室憎悪」だ。国民の税金を使ってこのような展示を愛知県が行うことについて、正直、私は首を傾げざるを得なかった。その作品をNHKは1か月を経てどう報じるのか。そのことに注目したのである。 作品がきちんと報じられなければ、いうまでもなく視聴者は正しい判断ができない。「正確に伝えない」ことは報道機関として許されることではない。 だが、結果は、私が危惧したとおりの番組になっていた。番組の主張に都合の悪い作品は、一切、報じられなかったのだ。つまり番組は、本来、問題のない「表現の不自由展」が、理不尽な反対や脅迫によって「中止に追い込まれた」ということを懸命に訴える番組構成となっていた。 番組で紹介されたのは、ごく一部の作品で、あの展示の性格を表わす肝心の作品群のことは伏せられた。なぜ伏せられたのか。理由は簡単だ。それを報じれば、自分たちの主張の方が「間違いである」ことが白日の下に晒されるからだ。「ああ、この表現の不自由展の実行委員会には、もともと2001年に大問題となった『問われる戦時性暴力』をつくった曰くつきの元NHKプロデューサーが入っている。番組は最初からそっちの線で描くことに決まっていたんだ」 私はそう思った。公平な番組ができるかどうかを期待していた自分が逆に恥ずかしくなった。では、まず実際の展示にはどんな作品があったのか、それを先に説明しておこう。 8月3日昼、白いカーテンをくぐって当該の展示コーナーに足を踏み入れた私の目に真っ先に飛び込んできたのは、2メートルほどの狭い通路の両側に展示された昭和天皇に関する作品群だった。 右側には、正装した昭和天皇の肖像を髑髏(どくろ)が睨んでいるもの、左側には昭和天皇の顏の部分を剥落(はくらく)させ、背景には大きく赤で✕が描かれた銅版画が掲げられていた。タイトルは「焼かれるべき絵」。作者による天皇への激しい憎悪が剥き出しにされた作品だった。 その先の右側にあったのが、昭和天皇の肖像がバーナーで焼かれていく映像作品だ。奇妙な音楽が流れ、なんとも嫌な思いが湧き上がるような演出の中、次第に焼かれていく昭和天皇の顏。すべてが焼かれ、やがて燃えかすになると、今度はこれが足で踏みつけられる。人間の尊厳というものをズタズタにする強烈な映像作品である。 よほど作者には昭和天皇への恨みがあるのだろう。これをつくって、作者はエクスタシーでも感じているのだろうか。そんな思いで私は映像を見つめた。思い浮かんだのは「グロテスク」という言葉である。 少女像が展示されているのは、昭和天皇へのヘイトを全開にしたこの作品群を通り抜け、右側に広がった空間の一角だった。少女像の手前の広い空間の真ん中には、テントのような作品が置かれていた。 題して「時代の肖像―絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳―」。かまくら形の外壁の天頂部に出征兵士に寄せ書きをした日の丸を貼りつけ、まわりには憲法九条を守れという新聞記事や靖国神社参拝の批判記事、あるいは安倍政権非難の言葉などがベタベタと貼りつけられ、底部にはアメリカの星条旗を敷いた作品だ。 idiot とは「愚かな」という意味であり、JAPONICAは「日本趣味」とでも訳すべきなのか。いずれにしても「絶滅危惧種」「円墳」という言葉からも、絶滅危惧種たる「愚かな」日本人、あるいは日本趣味の「お墓」を表わすものなのだろう。 日の丸の寄せ書きを頂点に貼った上に、このタイトルがつけられているので、少なくとも戦死した先人たちへの侮辱の作品であることはわかった。私は戦争ノンフィクションを10冊以上刊行しており、これまで最前線で戦った多くの元兵士を取材している。今ではほとんどが鬼籍に入られたが、その先人たちを貶める目的の作品であると感じた。 そして少女像。これはどうということはない。あのソウルの日本大使館前や、世界中のさまざまな場所に建てられている像だ。英語の解説文には、「Sexual Slavery」(性奴隷制)という言葉があり、「性奴隷」の象徴としてこの少女像が存在していることがしっかり記されていた。 説明書きを読んでみると〈1992年1月8日、日本軍「慰安婦」問題解決のための水曜デモが、日本大使館で始まった。2011年12月14日、1000回を迎えるにあたり、その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する〉と書かれている。 慰安婦のありもしない強制連行を否定する日本側の見解とは明らかに異なる主張を持つものだ。少女像の左側の壁には、元慰安婦の女性たちの写真も掲げられている。私には、これらが「反日」という政治的メッセージを訴えるための作品群であることがわかった。 しかし、クローズアップ現代には少女像の作者が登場し、「(これは)反日の象徴として語られていますが、私たちは平和の象徴と考えています。(戦争の)悲しみと暗い歴史を語る象徴なのです」というインタビューが放映された。慰安婦であることの明確な説明書きと矛盾しているのに、番組では、それを指摘もしない。 つまり良心的な作家が「平和を祈ってつくった作品が脅迫で圧殺された」という番組にしたかったのだろう。そのためには、昭和天皇や戦争で死んでいった若者たちを損壊、侮蔑する作品群だったことは「報じられない」のである。 この番組の悪質性は、自らの主張に「都合のいい作品だけを取り上げた」という点にあり、この展示の中止を求めた河村たかし名古屋市長には、当然“悪者”というイメージが植えつけられた。 日本では、公の電波を使ってこのような一方的な番組が放映されることを防ぐために放送法4条に以下の条文が定められている。(1)公安及び善良な風俗を害しないこと(2)政治的に公平であること(3)報道は事実をまげないですること(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること クローズアップ現代は明確に(2)(3)(4)に違反している。放送中から私のもとには「こんな番組が許されるのか」「作品の中身がこれだけネットで明らかにされているのにNHKはまだこんな番組をやっている」という訴えが相次いだ。 実は、日本の新聞やテレビがよくやるこのやり方は「ストローマン手法」と呼ばれる。対象となる出来事、あるいは対象者の発言の一部を切り取ったり、主旨をねじ曲げて報じて自己の主張に添うように記事や番組をつくるものだ。 ストローマン(straw man)とは、もともとは藁(わら)で作られた人形(藁人形)を指す英語である。つまり案山子(かかし)だ。都合のいいように事実をねじ曲げて報じるのだから、「倒す」のは簡単なことからついたとされる。ちなみに、これは欧米の言論界で最も軽蔑されるやり方として忌み嫌われている。 実は、産経新聞とフジテレビを除いて、この1か月間、これらの作品群の真実を報じたメディアはほとんど見られなかった。報じたら忽ち「そんな酷い展示だったのか!」と非難が高まり、「表現の自由が圧殺された」という趣旨の記事や番組ができなくなってしまうからである。 クローズアップ現代には日本文学研究者のロバート・キャンベル氏が登場し、こんなコメントをした。「私は“エビデンスのない共感”と呼んでいるんですが、自分にとって心地よい考えに出会った時や物の見方をみた時に、それに連動して、リツイートをしたり、コメントしたり、拡散していくということはあるわけですね。その傾向が今、世界中で広がっている中で、今回のケースは、日本の中で極めて特徴的なものとして現われたのかなと思います」 私は耳を疑った。このクローズアップ現代こそが、目の前の作品群の真実を封じて少女像だけの問題に矮小化し、“エビデンスのない共感”を大衆に求めたのではなかったのか、と。 私は、こういう公平性を欠いたマスコミ報道、特に新聞を取り上げて5月末に『新聞という病』(産経新聞出版)を出版した。3か月余りを経た現在、これが10万部を超すベストセラーになっている。 国民がいかに「事実をねじ曲げる」新聞に怒っているかを痛感した。だが、NHKも同じだ。私は「NHKという病」を追及する必要性を痛感している。なぜこんな放送局に税金が投じられ、国民が受信料を払わなければならないのか。国会の徹底追及をお願いしたい。
2019.09.07 07:00
NEWSポストセブン

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