ボーク重子さんは「全米最優秀女子高生」の母としても知られる
重子:年間約2000試合観ていらっしゃるとお聞きしました。世界の試合を観戦することになれば、時差もありますから寝る時間も削ることになりますが、それはご苦労ではないのですか?
ルミ子:全然(笑)。本当に、サッカーが好きで、観ていると楽しいし、勉強になるんです。だから、サッカーについて知るのは、楽しいことでしかないんです。何も苦になりません。寝不足はへっちゃらです。
重子:サッカーはルミ子さんにとって何でしょう。
ルミ子:人生にものすごい彩りを添えてくれたというか・・・・、いつか年老いて旅立つまで、今後の人生にとても大きな楽しみを与えてくれると思います。
私は、子どものころから歌やバレエなど芸事をずっとやってきて、そのほかのことはあまり知らないできたんですね。この世界に入ってからもとても忙しくて、他の世界のかたと知り合うチャンスもなかなかない。芸事一筋できたので、そのまま死んでいくんじゃ寂しいじゃないですか。サッカーを通して、いろんな世界があって、いろいろな人たちがいることを知り、そこから学んだり、それを逆に芸事に活かしたりと、本当に人生が倍以上豊かになった気がします。
重子:それがパッションの持つ力ですよね。新刊『「パッション」の見つけ方』にも書きましたが、私も最初にワシントンDCでギャラリーを開く決心をしたときに、周囲からさんざん「絶対無理」「失敗する」と言われましたが、結局やりとおすことができたのは、アートに対する大きなパッションがあったからです。アートが好きという自分のパッションを、その頃はまだ見下されがちだったアジアのアートの素晴らしさを伝えたいという、目的のある“外向き”のパッションに育ててからは、もう本当に猪突猛進、どんなに困難な状況が起きても恐れず突き進みました。
ルミ子:そこ! それですよね。パッションはいつも「問題解決力」がセットになっていると思うんです。いくら好きでも、それだけではやり通すことはできない。何を始めたとしても、大なり小なり必ず困難なことが起きます。それをどう解決して前に進むか。それは、自分の手で解決しなければいけないんです。最近パッションという言葉が周りであまり聞かれなくなってきたのは、その問題解決から逃げてしまう人が多いからでしょうか。
重子:そうかもしれませんね。アメリカでは、その「問題解決力」を育む教育が幼稚園から熱心に行われています。自分のパッションをどう見つけるか、見つけたらどう育てていくか、さらに、それをやりとおすためにどう問題を解決していくか。いわば人間力ともいえるその力を、3~4歳の頃からずっと育んでいく教育システムがあるのは、アメリカの強みかもしれません。