ロッキーは「エイドリアーン」と叫んで、愛のために戦ったが、オリ・マキもまた愛のために選択をする。結局、彼はマッチメーカーやマスコミを失望させたが、自分の気持ちに嘘をつくことはできなかった。後日談が人間らしくていい。彼は認知症になったが、あの日のことは忘れないと語っているそうだ。

 母親の嘘で育てられ、フランスを代表する作家になった男がいる。彼の名は、ロマン・ガリ。「母との約束、250通の手紙」は、ガリの小説「夜明けの約束」を映画化したものだ。第二次世界大戦下、子どもを必死に育てるシングルマザー。息子が作家になると信じ続ける。母親の言葉がかっこいい。「男が戦う理由は3つだけ。女、名誉、フランス」

 ロマン・ガリはこの言葉どおり、何人もの女性を愛し、作家となり、外交官にもなり、富を築いた。女優ジーン・セバーグの夫としても有名だ。ジーン・セバーグは、鎌田が愛してやまないジャン=リュック・ゴダールの作品にも出ている。「勝手にしやがれ」は名画座で何度もみたが、とても魅力的だった。

 戦地で主人公が戦っているとき、毎週、母親から手紙が届いた。しかし、どんでん返しがまっている。書けないけれど、これがまた、いいんだなあ。

 2月14日からロードショーされる「ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏」も、なかなかすごい。ハリウッドを巻き込んだ嘘のような実話を元にしている。

 アメリカの文壇に突如現われ、時代の寵児となった美少年作家J・T・リロイ。だが、本当に小説を書いているのはローラで、美少年はアバターだった。しかも、その美少年の姿は、サヴァンナという少女が変装したものだった。

 思惑通りJ.T.リロイは注目され、小説の価値は上がっていく。しかし、操り人形のサヴァンナが目覚め始める。カミングアウトし、アーティスト兼作家になっていくのだが……。どこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない。現実とバーチャルを行ったり来たりする。

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