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2020.02.09 06:58  女性セブン

知られざるアイヌと北方少数民族【前編】 アイヌ新法への本音

稚咲内の集落。道路は雪に覆われ、人気はなく閑散としていた(撮影/竹中明洋)

 20年近く前、道内でテレビ局の記者をしていた頃、十勝地方の上士幌町でアイヌ文化の伝承活動に取り組む川上英幸氏を長期取材したことがある。堂々とした白髭の持ち主ながら茶目っ気のある川上氏は、アイヌ文化に不勉強な私がしつこく質問するのに冗談を交えて説明してくれた。アイヌ料理をご馳走になったことも一度や二度ではない。

 出き上がった取材VTRを東京の本局の幹部に見せたところ、木で鼻を括ったように「泥臭い取材やってるね」と言われたことを憶えている。さも、もっと他に取材することがあるだろう、派手な事件のネタを取って来い、そう言わんばかり。当時の報道現場でアイヌといえば、そんな扱いだったように思う。

 アイヌ新法について北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は、「抱えきれないような苦しみと悲しみと歴史がありましたが、きょうから出発できるということは、歴史の大きな1ページ」と成立を評価した。

 だが、国が進めるこうしたアイヌ施策に諸手を挙げて賛成する人たちばかりではない。

 アイヌといえば、北海道の先住民族という認識が一般的だが、実はアイヌは北海道だけにいたのではなく、大きく北海道アイヌ、樺太アイヌ、千島アイヌと、文化や言葉を独自に持つ3つのグループに分けられる。さらに、日本の領土で暮らしていた北方少数民族にはウィルタやニヴフも存在する。

 先述した『ゴールデンカムイ』や『熱源』には、そうした少数民族がいきいきとした姿で登場する。ただし、現在のアイヌ施策からは、北海道アイヌ以外の少数民族は取り残されてしまっている。

 私たちは、そうした歴史を、どれだけ知っているだろうか。

◆強制移住させられた後、人口が3分の1になった

 日本最北端の街・稚内からは、宗谷海峡の対岸の樺太(ロシア語でサハリン)まで最も近いところで42km。天気がいい日は島影が見えるという。

 稚内の駅前でレンタカーに乗り、日本海沿いの一本道を南へと向かうと、1時間弱で小さな漁港に着く。陸に揚げられた漁船の多くは長年使われていないようで、寂寥感が漂う。そこから内陸に入った集落が稚咲内(わかさかない)だ。住宅は数十戸ほど。商店も見当たらず、かつてあった小学校は廃校になっていた。

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