カンテレと読売テレビに共通しているのは、「キー局よりも番組の制作数は少ないけど、質では負けたくない」「キー局ができない番組を手がけよう」という矜持。特にカンテレは、フジテレビの「月9」と「木曜劇場」が手堅い刑事・医療・弁護士ドラマで固める中、それらを選ぼうとしません。その姿勢は「違いを見せつけよう」という意地のようにも見えますし、結果的にドラマ全体の多様性を担保することにつながっています。
もともとキー局以外の系列局にとっては、ドラマだけでなくバラエティやドキュメンタリーなども含めて、全国放送は大きなチャンス。収入面はもちろん、制作力や存在価値のアピール、局員のやりがい、地元住民の支持など、多くのメリットがあります。
そんな意識が局員の間で共通認識となっているだけに、部署間の連携がスムーズで、一丸ムードが生まれやすいのも、キー局にはない強み。「今後、キー局の番組が現在以上にネットで見られるようになったら地方局は危ない」という声もあるだけに、彼らにとって「質の高い番組を制作することと、それを世間に認知してもらうこと」は重要なのです。
ここでは準キー局のドラマを挙げましたが、在名の東海テレビや中京テレビなども全国ネットで放送されるプライム帯のレギュラー番組を虎視眈々と狙っているでしょう。「キー局の番組に頼るだけでなく、自分たちもできるんだ」という系列局の意地と矜持が、「最近は似た番組ばかり」と揶揄されがちな現状を変える鍵を握っているのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。