仕事場にはギターがずらり
「僕は料理も好きなんですが、プロが作る料理はクオリティが高くても、100%僕の好みに合うわけじゃない。でも自分で作れば、クオリティは別にして、好みには合いますよね。僕にとって小説と音楽を作る感覚に違いはあまりなくて、長く続けていられるのは僕の好みに一致するものを作っているから。やりたいことがいろいろあって、小説や音楽では好きなことを自由にやれているから、どちらも飽きずにいられるんです」
そんな道尾だからこそ、デビューシングルにも当然、「やりたいこと」が込められている。実はこの楽曲の原案となっているのは、2018年7月に刊行された小説『スケルトン・キー』。歌詞やメロディに、同作につながる謎や仕掛けが施されているのである。
曲を聴いたファンからも、面白い反応が届いているという。
「僕の声が『スケルトン・キー』の主人公・坂木錠也の声に聞こえるって人が少なくないんですよ。錠也の声なんて、僕だって聞いたことがないのに(笑い)。小説世界とリンクさせていなければ、こんなことってないですよね。面白い現象が起きているな、と感じています」
連載を抱えている時は、日中のほとんどが執筆活動。一方、作曲はスタジオにこもりきりになるわけにもいかないので、2~3日といった短期間に行なう。没頭している時は、「手が震え始めてようやく、昨日の朝から何も食べていないことに気づく夜もある」というから、その集中力は尋常ではない。