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【著者に訊け】窪美澄氏 『たおやかに輪をえがいて』

窪美澄氏が『たおやかに輪をえがいて』を語る

【著者に訊け】窪美澄氏/『たおやかに輪をえがいて』/中央公論新社/1650円+税

 デビューから10年。女性にとっての性愛や妊娠出産をめぐり、それまで具体的に語られることの少なかった本音や実情を、繊細な筆致で綴ってきた窪美澄氏。同時に、美談にされがちな結婚や家族の欺瞞を暴くような作品も手がけてきた。これまでは自身が経験してきたアラサー、アラフォー世代の女性を主人公に据えることが多かったが、

「50代の女性を、まだ真正面から書いたことがなかったんですね。過ぎ去ったことではない、自分と同世代を客観的に観察するのは生々しくて難しいと思ったのですが、挑戦してみたかったんです」

『たおやかに輪をえがいて』の主人公は、52歳の専業主婦、酒井絵里子。2歳年上の夫・俊太郎と、大学2年生の娘・萌と暮らしている。夫はイクメンでもなかったし、家事や育児をほぼひとりでやってきたことに特に不満はない。それが当時はめずらしいことではなかったからだ。萌の反抗期には手を焼いたが、いまは穏やかな日々。その綻びとなったのは、夫のクローゼットで見つけた風俗店のポイントカードだった。

「作家になってから、出版社の人から風俗に行く人の話をよく聞くようになったんです。ライター時代にはなかった経験なので不思議ですよね(笑)。作中に出てくる、男性が風俗嬢の前でおいおい泣くというエピソードは取材して知ったことですが、ごく普通の男性がこんなに当たり前に風俗に通うんだと、私自身、絵里子みたいにカルチャーショックを感じました。それがこの小説を書かせたきっかけでもあります」

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