その結果、家族それぞれの道が分かれるとしても間違いではないし、ひとつの通過地点だったということでもいいのだという。
「もっと自由に、フレキシブルになっていいんじゃないという意味で、題名に『たおやかに』をつけました。絵里子自身が同調圧力の中にいて、自縄自縛に陥っていたから、そこから出してあげたかった」
主婦は、妻は、母は、こうあるべき。“家事をし、家庭を守るのはお母さん”という呪縛は根強い。
「私自身にもあったし、でももういいじゃないかと。異性愛者との間に子どもが二人という家族が理想だみたいなことは、自分の小説の中では書きたくないです。時代とともに家族観は変わってきた。家族のかたちが柳みたいにしなっていいよね、形を自在に変えていいよねと思っています」
窪氏が描いてきたのは常に「女性の選択」だ。しかも選んだ道を決して断罪しない。だから読者は、勇気づけられる。
【プロフィール】くぼ・みすみ/1965年東京生まれ。2009年「ミクマリ」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。2011年『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、2012年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、2019年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。その他の著書に『よるのふくらみ』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『いるいないみらい』等。164cm、A型。
構成■三浦天紗子 撮影■黒石あみ
※週刊ポスト2020年4月3日号