国際情報

コロナ禍のモノ不足 中国・武漢はどうやって解決したか

武漢で再開されたバス。利用者はマスクの着用、氏名とQRコードの登録、乗車前の検温が求められる。(Avalon/時事通信フォト)

 五輪延期が決まった後に浮上してきた感染爆発の恐れ。中国との“時差”をどう捉えるべきか。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 政府は26日、改正新型インフルエンザ対策と靴措置法に基づく政府対策本部を設置。これにより緊急事態宣言が出される可能性も出てきた。これは、3月25日から2日続けて1日の新たな感染者数の記録を更新したことを受けた動きで、厚生労働省は、「蔓延の恐れが高い」との報告を総理に行った。

 25日はすでに、小池百合子東京都知事が会見で使ったオーバーシュート、ロックダウンという言葉が独り歩きし、慌てた人々が都内のスーパーマーケットで買い占めに走る現象も明らかになった。翌日には、菅官房長官が「食料品は十分な供給能力がある」と説明したが、買い占めが収まる気配はない。テレビのニュース番組では空になった商品棚の映像が流され続け人々の不安を煽った。

 これはある意味、1月下旬の武漢の再現に近い。

 だが、武漢ではモノ不足やそれにともなう物価の高騰は、いまから考えれば限られた時間の中で解決されていた。中国はこの期間、豚肉は1斤(500グラム)10元(約150円)、野菜を10斤10元程度に保つことができたと胸を張った。

 いったい、どうやったのか。明らかになっているのは、政府備蓄を放出した作用だ。

 まず武漢政府は、蓄えていた冷凍豚肉を3月4日に200トン以上、市内150の拠点を通じて流通させた。19日にはさらに5000トンを流しているというのだ。

 それに加えて機能したのが、九省聯保聯供機制という緊急事態に備えた各省間の相互扶助システムである。武漢は1月23日の封鎖直後から山東、華南、安徽、江西、湖南、重慶、広西、雲南の八省・市との間でこれを結び、機能させた。結果、3月19日までの間に食料品などの物資が6.2万トン、野菜類は5.2万トン、冷凍肉も3000トンが武漢に運び込まれた。

 これに加えて中央政府が2月14日に1.4万トン、27日に2万トン、3月13日1.7万トンの冷凍肉を支援している。中央からの支援は食糧品にとどまらず、生活物資1.86万トン、石油など1.2万トンが3月18日までに運び込まれたという。

 武漢の経験からは、学ぶべきところもあるのだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン