自衛隊の指示は様々な方面に及ぶ
「洗濯は各自が行ないましたが、感染リスクが高い医官・看護官らは個室の風呂場や部屋に持ち込んだバケツ型の洗濯機を利用し、それ以外の隊員はフェリー内の洗濯機を共有して使いました」(同前)
その他の対策としては、「食事の際は対面を避ける」「対面の時は2メートル以上空ける」などがあるという。
新型コロナに限らず、自衛隊の感染症対策は基本を突き詰めることを重視する。その代表が「手洗い・うがいの励行」だ。自衛隊OBが語る。
「集団行動が基本の自衛隊では1人が感染症に罹患すれば、部隊の任務自体が行なえなくなってしまう。そのため、入隊後に教育隊から教えられる基本動作の中に手洗い・うがいの励行があります。その結果、手洗い・うがいをきっちりやる習慣が身につくのです」
手洗いの励行は、部隊生活の日常にも及ぶ。
「トイレや洗面所に『手洗いの仕方』を解説する貼り紙を出しているところもあります。それも、小便器の前だけでなく、個室に座ったときの正面にも張られていたりする。用を足すときに必ず目に入るよう指示の徹底化を図ります」(前出・自衛隊OB)
手洗いにも自衛隊ならではのポイントがある。
「石鹸をつけ両手の平をゴシゴシ前後にこする人が多いですが、そうすると親指と爪の洗浄が疎かになりがちです。そのため、『親指だけを洗う』『爪の先は別に洗う』『その後、爪の根元を洗う』など、手順を具体的に指示しています」(佐藤氏)
そうした指示は足元にも及ぶ。感染症対応の現場で、隊員自身がウイルスを運ぶような事態を避けるため、例えば、鳥インフルエンザや豚コレラなど家畜に感染症が発生した場合は、現地での活動後、ブーツに付いた土を必ず現場で落とし、靴底の消毒を徹底している。