『第1回親子で読んでほしい絵本大賞』授賞式(3月16日、JPIC読書アドバイザークラブ主催)で、大賞受賞の表彰をうけた作家・角田光代さん(撮影・石川正勝)

『第1回親子で読んでほしい絵本大賞』授賞式(3月16日、JPIC読書アドバイザークラブ主催)で、大賞受賞の表彰をうけた作家・角田光代さん(撮影・石川正勝)

 同じ作家として、角田氏が気になっていたのが、向田氏は何歳のときにどの作品を書いたのか、ということだったという。今回の絵本の文章を書き終わったのは、角田氏が51歳のとき。奇しくも向田さんが飛行機事故で亡くなったのが同じ51歳だった。同じ年齢のときに、この絵本を出したことに、作家としてすごく大きな意味を感じたと語る。

「若い頃、向田さんのエッセイは楽しく読みましたが、小説やドラマは大人の世界過ぎて、私にはわかりづらかった。だから向田作品を好きだと言えない20代を過ごしました。30代、40代も、向田さんは“大人のひと”と思っていたのですが、ある日、気がついたら、私は向田さんと同じ年齢になっていて、いまはもう年上になってしまいました。改めてふりかえると、なんと大人の世界を書いていたひとなんだろう……と。30代、40代の前半で、歳月を重ねた夫婦、夫婦のほころびを書けたというのはすごいと思います。48歳のときに書いたドラマ『眠り人形』では、女同士の嫉妬、見栄の張り合いを非常にさりげなく書いていて……、自分にはまだ書けないですね。

 だから、亡くなった51歳の向田さんと同じ年齢でめぐり逢えたご縁は、作家として貴重なことだと思います」

 この縁、向田さんの妹で、絵本の主人公でもある向田和子さんにとっても大きな意味があったという。和子さんが語る。

「昭和を生きた向田邦子が忘れさられるのは当たり前です。でもこうして偉大な作家ふたり(文担当の角田光代さん、絵を担当した西加奈子さん)が引き継いで、作品に新しい命を吹き込んでくれたことに感謝しています。おふたりに作品を託すことができました」

 昭和の作家から現代の作家へ、大切な作品というバトンが渡された。

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