にもかかわらず、血圧を基準値に近づけるために、降圧剤をのんでしまうと、こんなことが起こる。

「脳に血液が届かなくなってめまいがしたり、それによって転倒し、骨折したりすることすらある。

 私は患者さんに極力不要な薬を減らすように指導していますが、降圧剤をやめてよくなった人もたくさんいる。40~60才ならば上が160、下が100くらいでも経過を見ていればいい。75才を超えたら薬をのまない方が長生きしているというデータもあるくらいです」(岡田さん)

 不必要な降圧剤の投与により、恐ろしい副作用を招いている場合があると補足するのは大櫛さんだ。

「脳の血流が低下することで、めまいばかりか、脳梗塞の原因にもなることが判明しています。また、私たちの研究では、血圧180mmHg未満の人は降圧剤をのんでものまなくても死亡率に変わりはなく、180mmHg以上の人が降圧剤で血圧を20mmHgよりも下げると、死亡率が約5倍も高まるという結果が出ている。昔からいわれているように上の血圧は『年齢+90mmHg』が妥当。いまの基準は厳しすぎます」

◆コレステロール値

 血圧と並んで、中年以上になると高めになることが多いコレステロール値だが、こちらも「高い方が長生き」というデータがある。

「特に女性はコレステロール値に振り回されないでほしい。男性はこの値が高いと心筋梗塞になりやすいが、女性はコレステロールに強く、値が高くても平気なことが多い。閉経以降、女性ホルモンの量が減り、代謝の関係でコレステロール値が上昇する。いわば自然な変化なのです」(岡田さん)

 大櫛さんも声をそろえる。

「いまの基準値に基づくと、『悪玉コレステロール』を意味するLDL値は119mg/dlが上限とされていますが、欧米の基準と私が調査した結果では190まで問題がないことがわかっています。

 女性は脂をためてエネルギーとして使う能力が高く、コレステロールも脂なので値が高くても、実はそれほど問題ないのです。欧米では卵などからの摂取制限を廃止したり、米国内科医学会は、コレステロール値の測定は遺伝病スクリーニングを目的として生涯1度きりでいいとしています」

 一方、コレステロール値が正常値だからといって安心するのは早い、と言うのは赤坂山王クリニック院長の梅田悦生さん。

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