戦後最大ともいわれる新型コロナウイルスによる大不況の到来は、“局地バブル”に沸く首都圏の不動産市場にも大きな影響を及ぼしそうだ。特に、これまで活気づいてきた湾岸エリアのタワーマンションはどうなってしまうのか──。不動産ジャーナリストの榊淳司氏が今後を占う。
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東京五輪の開催1年延期は、東京・湾岸エリアのマンション市場に多大なる影響を及ぼすことになりそうだ。
すでにその代表格である選手村跡地の「晴海フラッグ」は早々に販売スケジュールの延期を公表した。競技会場が集中する江東区有明エリアで販売中の「シティタワーズ東京ベイ」も、4月9日時点で全1539戸のうち「396戸」が販売中となっている。こちらはすでに建物が完成している。
都営大江戸線の「勝どき」駅から徒歩1分と2分の「パークタワー勝どき ミッド/サウス」は全2786戸。建物の完成は2023年の8月に予定されているが、このコロナウイルスの騒ぎが収まらない限り、正式に販売を始めるのは難しいだろう。
振り返れば、東京五輪の開催が決まったのは2013年の9月だった。それまで「低迷」と言ってよかった東京湾岸エリアのマンション市場は、これをきっかけとして一気に活気づいた。駅から離れていて、本来なら資産価値をあまり評価できないようなタワーマンションまでもが、それまでの常識を超える高値で急速に売れ出したのだ。
その後、中古市場も含めて湾岸エリアのマンション市場は熱気に浮かされたように動き始めた。それは、30年近くマンション市場を眺めてきた私から見ると、かなり異様な状況であった。
しかし、今回のコロナウイルス蔓延による東京五輪の延期決定で、人々の熱も冷め始めている。