そもそも、五輪が開催されることとマンション市場はほとんど関係がないはずだ。なぜなら、五輪開催によって競技会場や選手村近辺の住宅需要が急増するようなことはないからだ。
ただ、国内外の注目が集まることでエリアへの認知度は高まる。そのこと自体はエリア内のマンションの資産価値評価にはプラスに働く。しかし、それは所詮一時的なことである。
私はかねがね五輪閉幕後の“祭りの後”感によって、このエリアの住宅需要は急速にしぼむのではないかと危惧してきた。例えば、競技会場が多く設けられる江東区の有明エリアは交通利便性の悪いところである。それに加えて大雑把な都市計画で街が作られたので、きわめて使い勝手が悪い。
コンベンションセンターやビッグサイトがあるので、東京に住む人なら何度かは訪れたことがあるはずだ。公共交通機関でのアクセスが不便なうえに、どこに行くにもかなりの距離を歩かされる。しかも街の風景が荒漠としているので街並みを眺めて歩く楽しみが薄い。そういう無機質な街並みの中にいくつかのタワマンが立っている。
これからも、新しいタワマンが生まれ続けるだろう。見渡す限り、土地ならいっぱい余っているからだ。東京五輪が1年延期で無事に開催されれば、このエリアはそれなりに華やぐだろう。
しかし、多くの人はもはや熱に浮かされないはずだ。なぜなら、2013年の五輪開催決定で実力不相応に値上がりしたこのエリアのマンション価格は、中古市場において急速に調整される可能性が高いからだ。つまりは「暴落」と呼んでいいほどの下落が起こる可能性がある。
その理由は、これから起こる世界的な景気後退である。