台風被害でタワマンの脆弱性が指摘された武蔵小杉エリア(時事通信フォト)
東京のマンション価格は、景気に大きく左右される。30年前に終わった平成の大バブルでは、マンション価格が新築、中古ともに「説明できない」レベルにまで値上がりした。そして、その後10年かけて調整(値下がり)した。
2008年に起こったリーマンショックの直前にも不動産のミニバブルが生じていた。それも2009年以降にやや調整されたが、2013年春に始まった日本銀行による異次元金融緩和によって終わった。
その後、地域限定でマンション価格が高騰する「局地バブル」が生じた。その局地エリアのひとつが東京の湾岸エリアなのである。具体的に言えば、東京都中央区の勝どき、晴海、月島、そして江東区の豊洲や有明などである。
これらの地域は明治から昭和の時代に埋め立てられ、陸地となった。だから何代にもわたって東京で住む人々からは、移住先として選ばれない。このエリアに開発されたタワマンに好んで住む人の多くは、ニューカマーのプチ成功者。すなわち、大学入学か就職を機に東京に移り住み、その後、世帯年収が1500万円前後に達した人々である。
彼らは東京のどこかに愛着があるわけでもない。だから埋立地に対するアレルギーがない。あの荒漠とした街並みに違和感を抱かず、むしろ未来への希望を見出す。そういった人々に支持されて、2013年以降の湾岸エリアではマンション価格がバブル的に値上がりしたのである。
しかし、今後世界に広がる景気後退の波が、脆弱なバブルなどは押し流してしまうだろう。
折しも、2019年10月の台風19号がもたらした水害によって、タワマンの災害に対する脆弱性が注目された。タワマンとは、電力が供給されなければ半日も過ごせない鉄筋コンクリートの箱である──という真実が広く知れ渡ってしまったのである。
あの出来事以降、人々のタワマンに対する目は厳しくなっていた。そこへ、このコロナウイルスの蔓延による健康への危惧が広がった。密閉された換気の悪い空間が危険というのなら、エレベーターを利用しないと外部と行き来できないタワマンはどうなるのか。