いずれにせよ、タワマン市場のバブルを育んできた幻想は消えつつある。しかも、世界経済は1930年代の大恐慌以来といわれる同時不況が起こりつつある。そんな時代に、「五輪会場に近い」というあやふやな理由から、湾岸エリアのタワマンを「説明できない」レベルの高値で購入する人は、極端に少なくなるだろう。
中古市場では、すでに成約数が大幅に減りつつある。次に起こるのは価格の下落だろう。新築市場も、しばらくはフリーズしたままの状態が続くだろう。
特に前述した選手村跡地の大規模開発は大きな試練に立たされている。局地バブルの永続を夢見て高値で販売を始めたものの、計画通りに進まずに困惑していたところにこの騒ぎ。五輪開催が1年延期されるのなら、マンションの引き渡しも同程度は延期されるのだろうか。であれば引き渡しは4年先となる。何ともリアリティがなくなるし、販売はさらに迷走するのではないか。
マンション市場全体の価格調整は湾岸エリアのみならず、局地バブルが生じた全エリアに及ぶはずだ。
平成バブル期と同レベルまで値上がりしていた山手線内の都心エリア。山手線内並みに値上がりしてしまった城南エリアや川崎市の武蔵小杉エリア。また、局地バブルでもないのに大規模複合開発の腕力で高値挑戦をしている海浜幕張、あるいは、つくばエクスプレスの沿線なども、新築マンションの売れ行きが止まりそうだ。そういったエリアの中古マンションもしばらく成約が止まった後、ジリジリと値下がりが始まるだろう。
結局、マンションといえども、その価格は需要と供給の関係で決まる。時の勢いでバブルが生じても、いつかは健全な需給バランスに戻るのである。そうした意味では、コロナウイルスによる世界同時不況の到来は、図らずもマンション市場に健全な調整をもたらすのではないだろうか。