そして、最もナーバスな問題、予期せぬ妊娠をした際の対処法について、子供たちにはこう教えている。
「妊娠したら産むか産まないかの二択です。どちらが幸せになれるのか、自分で決めていい。でも、考える時間は短い。人工妊娠中絶ができるのは、21週(妊娠6か月)まで。ひとりで決められるほど簡単な問題ではないからこそ、相談は早い方がいい。もし相談が遅れて、産む選択しかなくなっても、幸せになれる方法を、生徒たちに考えてもらいます」
通学しながら育てるか、育ててくれる親に託すか‥‥。種部さんが伝えたいのは、ひとりで抱え込まないでほしいということ。特に妊娠した場合、「親には言えない」「叱られる」などの理由で、ギリギリまで誰にも話さないことが多い。そういうときのために、医師や行政の相談窓口があることを知ってほしいのだという。
そして大切なのは、男女ともに同じ内容を教えること。男子に生理や妊娠、中絶について教え、女子にもコンドームについて教えなければ、当事者意識をもって理解し、相手の立場を思いやることができないからだ。
◆自分で決め、思いを伝えられる人に
種部さんが、性教育を行う中で一貫して伝えているのは、「性は人の幸せのためにある」ということ。
ここで、自分の過去を振り返ってみてほしい。かつて、好きでもない相手から強引にキスをされてもがまんしたり、断り切れず、不本意な性交をしてしまったことはないだろうか。嫌われたくないために、相手の欲求を受け入れていなかっただろうか‥‥。
「私の授業では、好きな人から“キスしていい?”と聞かれたら、どう答えるかを考えてもらっています」
とりあえず受け入れたり、ごまかしたりするのは簡単だが、断るには勇気と技術がいる。言いにくいことを言えるようになるには次の4つのステップが必要だという。
【1】見つめる…自分はどうしたいか、どう感じているか気持ちを探る。
【2】認める…つらいときに自分をほめて充電する。
【3】コントロールする…湧き上がる感情や欲求を抑制するスキルを磨く。
【4】表現する…「私は〇〇だと思う」と、主語を自分にしてシンプルに伝え、言いにくいことが言えたら自分をほめる。
「この4ステップにのっとってトレーニングし、ノーと言える自分を育てて、と伝えています」