種部さんらが富山市を中心に県内の学校で続けている出張性教育の様子
このような性教育環境に育った子供はどうなるか──。
『母体保護統計報告』(厚生労働省)によると、1995年には女子人口1000人に対し6.2人の割合だった10代の人工妊娠中絶率が(全国平均)、2001年には約13人と、わずか6年で2倍以上になった。
「富山市と私を含む富山県産婦人科医会のグループは、性教育をタブー視する世の論調に惑わされず、子供たちの実態に合った性教育の大切さを重視し、公立中学校の教員と協力し、性教育の出張授業をずっと続けてきました」
その成果が、ここ数年で、数字に表れたというわけだ。
◆コンドームが必要な理由を考えさせる
では、種部さんたちは、出張授業で一体どのようなことを教えてきたのだろうか。
「たとえば、性交は妊娠や性感染症のリスクを負う行為であること。避妊や性感染症予防の方法はあるけれども、100%ではないことを教えています。避妊は大人でも失敗することがある。だからこそ、リスクを避ける方法と、早く相談することの重要性を知ってほしいと思っています」
生徒がよく驚くのは、「エイプリルフールに性交をすると、出産予定日は10か月後の2月ではなく、クリスマスイブだ」と、説明したときだという。
妊娠期間は一般的に、“十月十日”といわれているが、医学的な妊娠期間は280日(約8か月間)なのだ。もちろん個人差があるため、35週あたりで出産を迎える人もいるが、これを知らない生徒は多いという。
さらに、避妊具であり性感染症の予防につながるコンドームについても教える。コンビニエンスストアなどでも買えるが、これを使うことで、お互いの体と命を守れる、と伝える。それと同時に、その避妊効果は80%であり、5回に1回はつけていても妊娠すると注意も促す。
「コンドームの存在を知っていても、なぜ必要かを知らなければ、使おうとはしません。たった1回の性交であっても、妊娠や性感染症は起こります。“愛でクラミジアは防げない”“恋人ができても、愛か何かまだわからない関係なら、荷物は背負わないようにコンドームとピルを使おう”と、私は伝えています」