彼が「足りない」と話すギガとは、通信データ容量のこと。単位であるギガバイト(GB)を略してギガと呼び、それが足りなくなる、月ごとの契約である容量の上限を超えてしまうことを「ギガが足りない」と言っている。上限を超えても通信がまったく出来なくなるわけではないが、速度が低速に制限されるため、動画を見ることはあきらめなければならない。
とはいえ、彼が契約しているのは、月に数十GBまで自由に使えるスマホの大容量プランだ。最近のスマホ契約プランとしては一般的なものだが、動画サービスやSNSが普及したり、画質が向上した影響か、通信量が足りなくなる人が増えている。ソフトバンクによる約1年前の調査によれば、ほぼ毎月、速度制限を受けている人は約14人に1人、過去も含めて速度制限の経験がある人は全体の約4割にのぼった。さらに学生の49.7%が速度制限の経験があり、会社員や自営業、主婦などと比べて職業別ではもっとも多い。それを反映してだろうか、月末になるとSNSでは「ギガが足りない」「速度制限きた!」という若者たちのつぶやきが多くなる。
この状態でオンライン授業が加われば、当然、通信量が莫大になり、大容量プランでも足りなくなりそうだ。前述の男子大学生も、契約を見直そうか悩んでいるという。
オンライン授業としてYouTubeライブやZoomなどで配信する場合、90分の授業で300~600MBの通信量を消費する。東京大学の大向一輝准教授によると、Zoomを使った映像と音声の授業を週10コマ行った場合、通信量は月間12GB必要になるという。
オンライン授業以外にも様々な用途でインターネットを利用することを考えると、スマホの契約だけで勉強も趣味も、生活に必要な通信もすべてをまかなうことは、かなり厳しいことに気がつく。つまり、学生の置かれた環境によっては、肝心な講義が受講できない危険性もあるのだ。その他、フリーWi-Fiスポットに集まってしまい、感染リスクが高まる危険性も指摘されている。
これを解消するためには、自宅に光回線を引くか、あるいは容量無制限のモバイルWi-Fiを契約するなどの方法が考えられる。
◆動画ではないオンライン授業案も
この事態を解消するために、大学や教員側もあれこれ試行錯誤している。
たとえばある大学では、自宅にネット環境が整わない学生のために、Wi-Fiが利用できる教室を開放したり、パソコンがそろっていない学生のために端末のある講義室を利用することも検討しているそうだ。しかし、これではせっかくオンライン授業にしても学生が集ってしまうリスクがある。