ライフ

【著者に訊け】三島邦弘氏 『パルプ・ノンフィクション』

三島邦弘氏が『パルプ・ノンフィクション 出版社つぶれるかもしれない日記』を語る

【著者に訊け】三島邦弘氏/『パルプ・ノンフィクション 出版社つぶれるかもしれない日記』/河出書房新社/1800円+税

「一冊入魂」「原点回帰」の野生派出版社・ミシマ社が折しも創業9年目を迎えた2014年末のこと。このどこか聞き覚えのある書名は、何の中身の構想も伴わないまま三島邦弘代表(44)の体内に〈降臨〉したのだという。

「もちろんタランティーノ監督の傑作『パルプ・フィクション』ありきの響きですが、気づくと『なんとかこれを書かねば』っていう、思いだけがあったというか。そうやって何もないところから本が生まれる過程を脱線も交えて追った本書は、まさに『パルプ・ノンフィクション』の名に相応しい感じも、今はします(笑い)」

 パルプ、つまり本や出版の今を書こうと思ったものの、編集者を頼むのも憚られ、自ら〈脳内編集者〉を兼務する迷走ぶりもそのまま綴られる。だが本書は〈古い枠組み〉から脱却し、より有機的で生き生きとしたシステムの構築をめざす、〈ほがらかでクレイジー〉なビジネス書でもあった。

 自由が丘と京都を拠点に出版界の常識にしなやかに風穴を開け、2011年には初著書『計画と無計画のあいだ』も刊行した三島氏。だが、本書の彼は当然ながら前著から9年分歳も重ね、ままならない資金繰りや新人教育など、大人の事情に塗れてもいた。

「よく経営を心配されるんですが、資金ショートはよくある話ですし、大丈夫なんです。むしろ僕の気がかりは、この10年で増えた1人出版社や小規模出版にあります。〈小舟〉同士が連携し、大手版元も巻き込んで補完し合う関係を、未だ作れていないのです。

 そこを繋いで毛細血管として機能させないと、結局は動脈頼みになって梗塞を起こしかねない。つまりは共倒れです。いくら小舟が多様な良書を作っても、本の世界そのものが続かなければ意味がないし、動脈だけで何とかなった時代はとっくに終わっているので」

関連キーワード

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン