「そもそも今のものを壊さなきゃ次に行けないという発想自体、近代の宿痾ですし、そんな時間があったらいいと思ったものを実践に移す方がよほど賢明です。

 それこそミシマ社の組織作りは非常時ベースで組んでいます。そうしないと生きていけないからです。この規模だと組織の硬直化は死活問題で、特に危機の時は先手、先手で実効策を講じないと命取りになる。日本ではこの20年、何もかもが後手前提でしたけど、そろそろ次代にパスを繋ぐべく動き始めないと、産業もろとも、社会もろともダメになってしまう」

 自社の組織改革のあいまに〈人間視点から地球視点へ〉の転換を語り、出版と教育と日本酒の未来を同じ土俵で語れるのも、おそらく彼と彼を取り巻く人々が魅力的な運動体であり続けるから。その過程の一端を切り取った本書に、結論など必要あろうはずもない。

【プロフィール】みしま・くにひろ/1975年京都府生まれ。京都大学文学部卒。出版社勤務を経て、2006年11月に(株)ミシマ社を単身で設立。少数精鋭にして一冊入魂の本作りや書店との直取引など、新たなビジネスモデルを次々と確立。また内田樹著『街場の教育論』や益田ミリ著『今日の人生』、クリープハイプ著『バンド』など、結果も出し続ける業界屈指の風雲児。著書は他に『失われた感覚を求めて』。現在は京都在住。170cm、62kg、O型。

●構成/橋本紀子 ●撮影/国府田利光

※週刊ポスト2020年5月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン