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2020.04.23 07:00  週刊ポスト

【著者に訊け】三島邦弘氏 『パルプ・ノンフィクション』

◆自分たち仕様でシステムを作る

〈活路は、先祖にあり〉と越前・和紙の里を訪ねたものの、先祖の不在に打ちのめされた氏は、受け継ぐべき知恵をやがて前近代に見出し、生産性やイノベーションといった言葉や近代的枠組みそのものを疑う、壮大な実験に打って出る。

「この本自体、起承転結や近代の約束事をあえて逸脱した実験みたいなものです(笑い)。でも能の舞台のように始まりと終わりが今一つハッキリしないものが、日本では文化として元来受容されていた。そもそもなぜ始点と終点が物語に必要かも、問われてこなかった気もします。

 それくらい、僕らが信じて疑わない常識やシステムも、今では人口が減って大量生産大量消費では立ち行かずに不具合を起こしています。こうなると次世代にも手渡せるようなシステムを自分たち仕様で手作りする以外、やるべきことなんてないと思うんです。現に周防大島で断水が1か月以上続いた時だって国は何もしなかったし、今回のコロナ対応でもいかに自分たちの足元が脆弱か、ハッキリしたと思う。

 ただ、批判で終わっては意味がなくて、自分たちの現実や足場をきちんと作っておくことが大事。そうでないとトップがすげかわり何も変わらない状態が延々繰り返されるだけです」

〈私たちをとりまく環境は、実態としてすでに『無政府状態』に近い〉との認識に立ち、かといって絶望するでもない三島氏は、近代が斬り捨ててしまったものと令和の最新技術とをしなやかに切り結び、融合を待つ。

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