◆感染症対策よりも効率化優先なのか
再編統合の内容はどうなっているのか。今回、対象となった病院は全国の公立・公的病院1466か所のうち約440か所。30%が対象だ。リストは、9項目の診療実績と、競合する病院がクルマで20分以内にあるかで判定。大半は地方の病院で、冒頭にも指摘したように感染症指定医療機関が53病院含まれている。
昨年秋のリスト公表以降、各地で噴出している再編・統合に反対する声を拾ってみよう。
「診療実績は急性期医療機能の一部だけを取り出し、2017年6月の1か月分のみで判断。へき地医療を担う病院や災害拠点病院などが地域で果たしてきた役割なども考慮されていない」(全国保険医団体連合会)
「唐突な公表の仕方は市民の誤解や不安、地域医療の混乱を招きかねない」(京都府舞鶴市/共同通信アンケート)
「効率的な医療提供体制の整備だけを考えているとしか思えない。国民皆保険の下に必要不可欠な地域医療を支える体制を整えるべきだ」(岩手県遠野市/同アンケート)
「厚労省の姿勢に抗議するとともに、公立・公的医療機関再検証リストの修正ではなく、撤回を要請します」(奈良県社会保障推進協議会など4団体の共同声明)
コロナ感染拡大を受けての反対声明を出したのは、感染症指定医療機関が2つ(病床数は11)しかない高知県の高知県社会保障推進協議会だ。3月5日の会見で、新型コロナ感染症に対する緊急な対応が求められる中で依拠すべき公的病院をダウンサイジングしていく方針は政策矛盾などと指摘した。
最近はネット上に「公立・公的病院の統廃合は中止に」と訴えるサイトが登場し、反対署名活動を展開する動きも出てきている。
公立・公的病院の再編・統合構想は、大本は医療費抑制を求める財務省の意向に基づくものとみられるが、効率性だけでなく地方活性化、地方の医療基盤維持といった側面からの検証を含め複合的な議論が必要だ。