衆院厚労委員会で質問に答える加藤厚労相(時事通信フォト)

衆院厚労委員会で質問に答える加藤厚労相(時事通信フォト)

 再編問題では病床数の多さばかりがクローズアップされているが、日本の医療を考えると他にも問題は多い。ある専門家は「人口1000人当たりの医師数は日本では2.4人。OECD平均は3.5人である」と医師数の少なさを懸念している。

 また、集中治療用の病床数不足の問題もある。4月1日に理事長声明を発表した日本集中治療医学会のサイトによると、人口10万人当たりのICU(集中治療室)の病床数は、日本は5床程度。ドイツの29~30床の6分の1程度でしかない。医療崩壊が問題となったイタリアの12床程度と比べても半分以下だ。

 理事長声明は、日本のICU病床数について、「これはイタリアの半分以下であり、死者数から見たオーバーシュートは非常に早く訪れることが予想されます」と警鐘を鳴らしている。

 さらに言えば医師や看護師など医療従事者の過重労働も大きな課題とされている。こうしたさまざまな状況を踏まえると、医療費削減を狙いとした拙速な公立・公的病院の再編統合という荒療治は大きな不安を残す。

 感染症は今回のコロナ禍に限った話ではない。いつ再び見舞われるか分からない新たな感染症対策も見据えた、医療機関の質的改善、医療スタッフ拡充などを含めた総合的な医療制度、医療体制改革が必要なのではないだろうか。

 廃線にした鉄道を再び復活させるのは至難の業。病院も一緒である。地域の医療基盤はいったん崩壊してしまったら、再構築するにはとてつもないコストと時間がかかる。中長期的な視野に基づいた慎重な議論が望まれる。

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