都内在住のBさん(30代)は、3月の下旬、仕事を終えて帰宅する途中に頭痛を感じ、翌朝には39度台の発熱と倦怠感に苛まれた。同じ会社内から感染者が出た、とは聞いていたが、部署も違い、ほとんど話したこともない人。それでも万一の「濃厚接触の可能性があるかも知れない」と保健所に相談し、病院で検査を受けたところ感染が発覚した。
「陽性反応が出て入院するまでの3~4日は、本当に死ぬかと思いましたね。症状を保健所に伝えても”軽症”ですと言われ、本当に驚いた。インフルエンザの何倍もきついのに、これで軽症かと。コロナなんて風邪みたいなもんでしょ、などと友達と話していたのに。本当にコロナはやばい、気をつけろとSNSで知人に伝えました」(Bさん)
入院後はすっかり症状もよくなり、一週間ほど経過した頃には検査結果も「陰性」に。ほぼ二週間で病院を出た後は、なるべく早く仕事に戻り、人のために頑張ろうと意気込んだ。これまでは、できれば仕事なんかしたくない、遊んで暮らしたいと思っていたが、そんな怠惰な生活をすべきではないと、感染したことで思い知ったのだ。しかし……。
「現場系の仕事をしていたのですが、私が感染したことが一気に職場や取引先に知られ、会社自体に風評被害が出ていたと知らされました。職場にはできれば来ないでほしい、と遠回りに言われ、それがいつまでかもわからない。大手の建設会社も工事をストップするなどしていて、仕事は減っています。その少ない仕事にも関わることができません。私の場合、基本給と現場に出た分の歩合が収入なんですが、基本給は月に10万円に満たない。みんなが不安がっているのはわかります。しかし、ここまで敬遠されると気が滅入る。向上心に燃えていましたが、今は絶望感しかありません」(Bさん)
ウイルスの怖さは、ウイルス自体ではなく、極度に人間が怖がることにある、などとも言われる。日本だけでなく、世界中で新型コロナウイルスに起因する差別が発生しているが、仮にある程度ウイルス感染が沈静化したところで、こちらはすぐに消え去りそうもない、われわれ人間側の問題なのだ。