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コロナ禍で鮮明に 非常時に力を発揮できる人とそうでない人

桜丘中学校の前校長、西郷さん(撮影/浅野剛)

 新型コロナウイルスによる臨時休校や外出制限、リモートワークなどにより、家族が四六時中、顔を合わせる生活が続いている。そしてそれは、子育てにも“過干渉”という名の影をも落として、子どもの成長に取り返しのつかない悪影響を及ぼしている――。

“過干渉”からかけ離れた公立中学校がある。それは、不必要な校則や指導をすべてなくした東京・世田谷区立桜丘中学校だ。前校長である西郷孝彦さん(65才)の「子どもに不必要な干渉をせず、子どもを信じて、子ども自身に任せる」という教育は全国的に知れ渡り、著書『「過干渉」をやめたら子どもは伸びる』(共著・尾木直樹、吉原毅)、『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』も好評だ。

◆干渉されない時間が自主性を育む

 西郷さんが校長を務めた桜丘中学校をこの春卒業したばかりのある男子生徒は、コロナ禍に動じる様子があまりない。そのことにいちばん驚いたのは、母親だった。

「息子は春から都内の高校に入学しましたが、1日登校しただけで、休校が続いています。さぞ不安を抱えているだろうと聞いてみたのですが、“どんな状況でも、その中でやりたいことや楽しみを見つけるだけ”と、サラッと言ってのけたんです」(男子生徒の母親)

 この男子生徒が特別なのではない。こうした考え方は、「桜丘中学校の“干渉されない3年間”で身についた」と、ほかの卒業生も、口をそろえる。

「西郷校長(当時)は、常々、“勉強ができることだけがすべてじゃない”“一人ひとり違っている方がいい”とよく話してくれました。“ならば、自分の得意なこと、やりたいことはなんだろう”と考えるクセが、桜丘中の3年間で身についたと思います」(卒業生)

 先の生徒の母親が続ける。

「息子は、受験する高校を自分で探して、決めました。もともとは控え目で自分の強みを見つけようともがいていた息子ですが、この3年で“自分の力”を信じられる人間に変わっていきました。ハラハラしながらもなるべく口出しをせず、子どもを信じて任せるようにしたことで、息子がしっかりと“自分”というものを持てる人間に成長した。親としてはこれほどうれしいことはありません」

◆“他人の評価”が指標だと非常時に思考がフリーズ

 だが、非常事態のいまの日本では、逆の動きが起きている。個人の判断や考えを軽視し、「こういうときはお上の言うことに黙って従え」と公然と口にする識者や有名人まで現れた。そして、同調しない人間を口撃する。

『「過干渉」をやめたら~』の著者の1人で、麻布学園理事長を務める吉原毅さんは、コロナ禍における同校の対応が予想を超えて早かったことに驚いたという。男子校の麻布学園は私立の中高一貫校で、生徒はもちろん、教師の自主性も重んじる校風がある。

「麻布の休校は、国から要請があったからではなく、生徒の安全を最優先しようと、現場の先生が決めたことでした。伝統的にフェイスtoフェイスの対面教育に力を入れていたため、半面、ICT(情報通信技術)教育に後れをとっていました。ですが、社会が一瞬にして激変した瞬間、ICTにも力を注ぐべきと、即、舵を切りました。

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