ソウルの日本大使館前にある慰安婦像
元慰安婦が挺対協に対して反乱を起こしたのは、じつはこれが初めてではない。拙著『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)では、元慰安婦である沈美子(シン・ミジャ、故人)氏が起こした裁判についてレポートしている。以下、引用する。
【04年3月13日、沈美子氏ら13人の元慰安婦は、挺対協と(元慰安婦の支援施設である)ナヌムの家に対して、「募金行為及びデモ禁止の仮処分申請」を申し立てた。
その目的は、運動の資金源である募金を止めさせることと、日本大使館前で行われる水曜デモを止めさせることにあった。準備書面は水曜デモに対する痛烈な批判となっている。
〈日本軍慰安婦または女子勤労挺身隊ではない、日本政府が言う偽物を動員し、ソウル日本大使館の前や周辺で次のような内容や表現を提唱したり、流布する行為を禁ずる。
一・日本軍慰安婦に対するアジア女性基金は欺瞞だ。日本のカネを受領するのは公娼を認めることだ。
二・その他、被告が日本軍慰安婦の利益を代弁するという趣旨の内容〉(要約)
沈美子氏の支援者は、裁判に至った経緯をこう解説する。
「多くのハルモニ(元慰安婦)は貧しい境遇にあったのに、挺対協がほとんどのお金を持って行ってしまうことを沈美子はおかしいと感じていたのです。そこで三十三人の元慰安婦を集めて『世界平和無窮花会』を組織して独自の活動を目指した。そして、挺対協やナヌムの家などの元慰安婦を食い物にしている運動体の解散を目指し裁判を起こしたのです」(彼女の支援者)】
沈美子氏が指弾した「挺対協とカネ」の問題は、今なお続いている。李容洙氏は先の会見でこう暴露したのだ。
「(水曜集会に)参加した学生たちが出した寄付金はどこに使われているかわからない。寄付金や基金などが集まれば被害者に使うべきなのに、挺対協は被害者に使ったことがない。水曜集会は学生たちに苦労だけをさせ、金を失わせるだけで、まともな教育にもならない」
水曜集会には、若者や教員に引率された学生が多く参加していることで知られている。李容洙氏はそうした現状を「教育にならない」とバッサリと切り捨てたのだ。