国内

岩手とコロナ、地元民・出身者が語る「噂拡散の速さと慎重さ」

岩手県「感染者ゼロ」の裏で…

 新型コロナウイルスの感染者数がいまだ0人なのが岩手県だ(5月11日現在)。4月上旬ごろ、島根県と鳥取県とともに0人が続いていたことから、ネット上ではこの3県への注目が高まっていた。まずは島根で感染者が出て、続いて鳥取でも出たことから岩手に対して「優勝」「金メダル」などと書かれた。

 そんな状況下にあるが、7日、同県北上市の高橋敏彦市長は、市の公式HPで以下の注意喚起を行った。

〈当市においても市内企業に勤務されているご家族をはじめ、職場の方やその他取引先など関係者の方々に対する誹謗・中傷の相談を受けております。他県から転居してきたこと等を理由とした、不当な「差別・いやがらせ・偏見・いじめ」は、決して許されるものではありません。市民の皆さんには是非とも落ち着いて、冷静な対応をお願いするとともに、子どもたちに対しても、仲間を傷つけるような言葉づかいや態度をとらず、思いやりをもって行動するよう声をかけていただきたいと思います〉

 朝日新聞の電子版は9日、〈感染ゼロ岩手で「コロナ県!」 県外ナンバー中傷相次ぐ〉という記事を掲載し、「他県から来るな」と言われた人がいたことや、転勤者の小学生と中学生の子供が同級生から「コロナ県」とからかわれたという、県に寄せられた相談内容を紹介した。

 岩手とコロナに関しては、「千葉から帰省した妊婦が破水して救急搬送されたもののコロナの感染リスクを理由に2軒の病院から受け入れを拒否された」ことや「東京から移住してきた男性が当初予定していたマンションへの居住を断られ、別の場所に仮住まいをしていたところ、その家が焼けて死亡した」という件がネットでは取り沙汰されていた。

 こうしたことからネットの匿名掲示板5ちゃんねるには岩手について「まあ県民性だよな」や「震災の時県外のもんにどれだけ助けてもらったと思ってんだこいつら!」「今後岩手に何かあっても一切手を差し伸べないように 余計なお世話らしいから」といった厳しい意見が並ぶ。

◆とにかく噂話が素早く広がる

 神奈川県在住で、冒頭の注意喚起がHPに掲載された北上市出身の60代女性は、妊婦の受け入れが拒否された件については「地元ではまだ感染対策が充分じゃない病院が多いみたいです。医療が弱い地域があるので、そこは理解してほしいなと思います」と語る。

 この女性は「岩手県知事の対応はそもそも早かったと思います」と言う。実際、達増拓也知事は、2月7日に感染症専門医による「県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会」を設置。3月30日には、首都圏から来県した人へ2週間の外出自粛要請をしていた。こうしたトップのリーダーシップが発揮された素早い動きがあり、県民の感染対策への意識も高いようだ。

 前出の女性は上記のように市長が市民に呼びかけざるを得なくなったことについては、その土地ならではの噂話の拡散力の速さが関係しているのでは、と述べる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン