「ウチの息子が3年前に実家に戻り、コンビニでパンを買い、店員から『いつ来たの?』などと聞かれて答えたんですよ。そうしたら、すぐに近所に住む私の弟に息子がコンビニに行ったことが伝わっていました。
とにかく情報の拡散が速いんですよ。単に”孫が祖母の家に来てコンビニでパンを買った”だけなのに、ありとあらゆる噂がすぐに近所で伝わってしまう。どうでもいい話でしょ? それなのに、普段とは違うことが起こったら噂話として価値が出る。だからこそ私の弟も、『自分がコロナ感染第一号になったら大変なことになる…』という恐怖感を持っています。県民の多くにそういった考えがあるから、防衛本能が働く。他の都道府県のかたから見れば過剰反応と捉えられるのかもしれませんが…」
また、別の岩手県在住男性は「私がどこの市在住かも言わないでほしい」と述べたうえで、情報伝達の速さと警戒心の強さがあることを認める。
「それなりの大きな駅近くに住んでいる私の知り合いは月に2回、東京と岩手を行き来する生活をしています。しかし、彼は3月から一度も東京から帰ってきていないんですよ。電話で聞いてみたら、彼はこう言っていました。
『もう仕事があるわけではないので、本当は岩手に帰りたいんだけど、帰ったら“あの人、東京から帰ってきたんだよ”“あの人、感染してるんじゃないの?”と近所で噂を立てられて会社にも家族にも迷惑がかかってしまうかもしれません。いつしか感染したことにさせられるかもしれない。だから東京に残り続けているのです』」
そして男性はこう続けた。
「東北新幹線の盛岡駅の改札でも体温チェックをするなど、岩手は慎重に対策を進めてきました。私の周りでも先の男性のように感染しないように慎重に行動している人が多い。『コロナ県』などといやがらせをするのは言語道断ですが、決して岩手を陰湿だ、などと決めつけないでいただきたいのですが……。こうした慎重さがあるから感染者数がゼロなのかもしれません」