なぜ、伊藤がこれほど「面白い役」を独占できるのか? それはおそらく本人が「面白い」と思ったことは徹底的にやる性格だからだろう。もともと二枚目だが、繊細な表現とか、微妙なニュアンスを求められる恋愛ドラマよりは、友情や信頼、団結力がカギとなる『救命病棟24時』『ブサー・ビート~崖っぷちのヒーロー』といった体育会系作品が多かった。代表作といえば『海猿』シリーズだ。
びっくりしたのは、約10年前、突如、『とんねるずのみなさんのおかげでしたSP』の「モジモジくん」のコーナーで、「モジあきでーす!!」と、例の全身銀色のピタピタスーツ姿で登場したこと。「夢がかないました」とにこにこしながら、歌うわ踊るわ、カメラ目線で「さとみ、見てっか! お兄ちゃん、出たよ!! お兄ちゃん、やっと出た」と故郷の妹に喜びの声をぶつけたのだ。すごいな。やっとって。面白いことをやる性格というより先に、本人が「面白い」のだった。
屈折した役を演じても、底にはこの明るさがある。伊藤英明ならば体当たりでやってくれる。こんな期待感を抱かせるのも俳優の才能なのだ。それがよくわかった。