ライフ

犬山紙子、佐藤愛子&小島慶子の往復書簡で感じた“少女犬山”

コラムニスト・犬山紙子はどう読んだか

『九十歳。何がめでたい』が128万部のベストセラーになった作家・佐藤愛子さん(96歳)が、タレント・エッセイストの小島慶子さん(47歳)と2年にわたる手紙のやりとりをまとめた単行本『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』が話題を呼んでいる。年の差50歳、世代も考え方も違う2人が夫婦関係や生き方などについて交わす激烈なやりとりには、「面白い!」「勇気をもらった」など、共感の声が多数寄せられている。

 2人の“真剣勝負”はこんな感じで展開される。

 *
佐藤愛子×小島慶子「酢ダコ」をめぐる手紙のやりとり(本書より摘要)

佐藤愛子
世の中にはいろんな人がいます。…「蛸の酢のもの」を酸っぱいから嫌いだという人を、味のわからん奴、と怒ってもしょうがない。また、無理に嫌いでなくなろうと努力する必要もない。…今の時代は何かというと人の気持をわからなければいけないといい過ぎる…エイいちいちうるせえ、と私はいいたくなる。

VS

小島慶子
佐藤さんは酢ダコに対する多様性に寛容でいらっしゃるのですが、私は「どんなに不味い酢ダコに当たっても、美味いと言わねばならない」と頑なに思い込んでいるようなのです。酢ダコ原理主義です。…酢ダコ嫌いであっても「酢ダコは美味い」と言うべく最大限の努力をするべきだと思っているんですね。

 *
 そんな往復書簡エッセイ『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』をコラムニスト・エッセイストの犬山紙子さんはどう読んだのか。犬山さんによる書評をお届けする。

【プロフィール】
犬山紙子/1981年生まれ。近著『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』ほか著書多数。

 * * *
 私にとって小島さんは「先を行っている先輩」。私だったら保身に走って言えないことでも小島さんはズバッと代弁してくれる論客で、それでいて実際にお会いすると、本当に優しくて気遣い上手。

 ところが本書では、そうした魅力とともに、意外な繊細さまで見えてきました。

 それはひとえに、小島さんが佐藤さんに対して、恥ずかしいことも悪いところも全部さらけ出して丸裸になっているから。50歳上の佐藤さんに失礼がないか気にしながらも、誠実に向き合おうとする真面目さが伝わってきました。

 そしてそんな小島さんが見せる弱さに、私は自分を重ね合わせてしまいました。

 小島さんは、「どんなに不味い酢ダコに当たっても美味いと言わねばならない」と頑なに思い込んでしまう酢ダコ原理主義者。実は私もそう。プライベートでは、「いまこの場ではこう言う方が周りに喜ばれるかな」と思って、つい本音を隠してしまうことがあります。

 一方の佐藤さんは、酢ダコが好きな人も嫌いな人も認めて、多様性を肯定する酢ダコ多元主義者です。ハッとさせられました。

佐藤愛子さんとの共著の単行本のタイトルは『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン