因縁対決続く「日清のどん兵衛シリーズ」と「マルちゃん赤いきつねと緑のたぬき」
◆「どん兵衛」vs「マルちゃん」の因縁対決
巣ごもり特需でカップ麺の売れ行きが好調なのは日清食品ばかりではない。「マルちゃん」ブランドの東洋水産も2020年3月期の連結決算の売上高が4160億円で前期比3.7%増えた。純利益は233億円で26.8%の大幅増益となった。
「赤いきつね」40周年企画の和風麺や新商品「マルちゃん正麺カップ」が牽引した。国内即席麺事業の売上高は1933億円。前期より57億円増えた。この57億円が“巣ごもり消費”が寄与した分といえる。2021年3月期も業績は続伸する見込みだ。
東洋水産の創業者、森和夫氏(故人)はアンチ日清食品の急先鋒だ。日清食品の創業者、安藤百福氏(同)とは不倶戴天の敵という間柄である。
「日清のどん兵衛」が山城新伍氏を起用したCMの効果もあって、西日本では「カップヌードル」の売り上げを超えたことがある。東洋水産の当時の社長だった森和夫氏は、「マルちゃん・カップきつねうどん」の販売で安藤百福氏に先行した。
周囲から製造特許の取得を勧められたが、「今さら、うどんで特許もないだろう」と言い、特許を取得しなかった。「日清のどん兵衛」の爆発的な売れ行きを目の当たりにして「特許を取っておけばよかった」と悔しがったというエピソードが残る。
東洋水産は「日清のどん兵衛」の大ヒットによって販売戦略の変更を余儀なくされ、「マルちゃん・赤いきつね」を投入した。この時から「日清のどん兵衛」と「マルちゃん・赤いきつね」の“熱湯対熱湯”の因縁の争いが始まったのである。
コロナ禍の経済では、キラー・コンテンツを持つトップ企業がさらに強くなる傾向があり、ラーメン市場はまさにこの定説が当てはまる。特需に甘んじることなく新事業にも果敢に投資する日清食品の「こだわり」は、疲弊する日本企業再興の指針となるだろう。