◆専用麺の開発で「出前」にも進出
多くの企業が業績予想を未定とするなか、日清食品は2021年3月期の予想をきちんと出したのは特筆ものだ。売上収益は前期比4%増の4860億円、純利益は4%増の305億円を計画する。
だが、コロナ特需に決して浮かれていないのも、日清食品の強さの秘密といえる。ふんどしをしっかり締め、「巣ごもり需要の効果がいつまで続くかは見通せない。新型コロナウイルスの感染拡大が収束したあとの消費者の好みの変化などを見極めたい」と、すでに“ポスト・コロナ”を見据えている。
そのひとつが、宅配市場である。長引く外出自粛要請で料理の宅配サービスがスポットライトを浴びているが、日清食品はこの好循環を逃さない。
5月11日、ラーメンを出前する「RAMEN EX(ラーメン イーエックス)」を始めた。宅配するのは、一風堂(福岡市)「一風堂監修 博多とんこつラーメン」、すみれ(札幌市)「札幌濃厚味噌ラーメン」、ますたに(京都市)「背脂鶏ガラ醤油ラーメン」、無鉄砲(京都府木津川市)「とんこつラーメン」の全国有名ラーメン店4店と、日清食品の独自ブランド「豚天国ラーメン」の5品だ。
価格は税込み1080円(「豚天国」は1380円)。ウーバーイーツや出前館などから注文を受け付け、別途配送手数料がかかる。宅配サービスは東京・港区西麻布周辺からスタート。5月中旬に大阪・梅田、東京・新宿でもサービスを開始した。6月には福岡市内にもサービスエリアを拡大する。
ラーメンの宅配は麺が伸びたりスープが冷めるなど、克服すべき課題も多かった。そこで日清食品はインスタント麺の製造ノウハウを生かし、時間がたっても伸びにくい宅配専用の麺を有名4店と共同で開発したのである。「専用の麺・スープ・具材を、電子レンジで加熱することで、お店で食べるラーメンと変わらない本格的な味わいを手軽に楽しめます」がキャッチフレーズだ。
低価格が売りの「熱烈中華食堂日高屋」を運営するハイデイ日高も1月末、ラーメンの出前を解禁している。これまで出前はチャーハンや餃子などに限定していたが、看板メニューの中華そばの出前に踏み切った。出前館とエフピコが共同開発したデリバリー特化型の新容器の誕生で、出前館のラーメンを取り扱う店舗数は2倍になったという。
コロナ不況を乗り切るため、テイクアウトや宅配に力を入れる飲食店が多い中、日清食品ほかのラーメン宅配事業が成功すれば、いつでも食べたいラーメン店の味を家にいながら楽しむことができるようになるかもしれない。