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手続きが煩雑すぎる雇用調整助成金 多くの企業が断念する現実

オンライン申請のシステム不具合で受け付け延期になるなどトラブル続き(写真/共同通信社)

「世界で最も手厚いレベルまで特例的に引き上げます」──安倍晋三首相はそう胸を反り返らせた。「雇用調整助成金」の上限を1日あたり1万5000円に引き上げると発表したときのことだ。

 この助成金は企業が社員を休業させたときに支払う「休業手当」を雇用保険から補助する制度で、従来は1人あたり1日8830円が上限だったから、ざっと2倍に引き上げることになる。

「これで休業手当がアップする」。そう“ぬか喜び”しているサラリーマンは多いのではないか。

 だが、ことはそう単純ではない。雇用調整助成金はあくまで会社に渡される金だからだ。社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。

「企業が従業員を休ませた場合、給料の6割以上の休業手当を支払う必要があります。雇用調整助成金は支払った休業手当の一部を後で企業に補填する制度ですから、社員がもらう手当が増えるわけではない。

 中小企業の休業手当は6割ギリギリのところが多い。助成金の上限額が引き上げられれば、休業手当を給料の7割や8割に増やすこともできるように思うかもしれないが、現実には中小企業の多くは資金繰りが苦しく、後払いの助成金を当てにして休業手当を上げる余裕はないのが実情です」

 しかも、助成金の申請手続きが複雑だ。ハローワークに提出しなければならない書類だけでも、「休業等実施計画」「教育訓練実績一覧表」から、労働者代表との「休業協定書」、社員全員のタイムカードや賃金台帳など12種類にのぼる。

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