1995年、ハイン大震災の被災を免れたパチンコ店は大盛況(時事通信フォト)

1995年、阪神大震災の被災を免れたパチンコ店は大盛況(時事通信フォト)

◆エンタメなんて水物。パチンコは上手くやってきたほう

「みなさんパチンコの話ばかりですけど、パチスロ機も頭が痛い。入れ替え大変でしたよ。6号機ですね。そもそも在庫がない。無いからって言い訳も出来るからよかったですけど、5号機のままのほうが理想でした」

 その他に5.9号機やら4号機最高という話が出たが、とにかくこのスロ台の数字が大きくなるほど、新しくなるほど射幸性は抑えられてきた。かつての4号機は1990年代、パチスロブームとサラ金地獄に火を付けた悪魔の筐体だが、それでもホール関係者にとっては華やかなりし日のよき思い出らしい。もっとも西口さんは少し入社が遅いため、業界関係者としての思い入れそのものは2004年からの5号機とのことだ。

「まあそうは言ってもうちはなんとかなってますよ。地場の勝ち組ホールって強いんです。地域の人はみんなうちに来る。三世代どころか四世代目の若いお客さんもいます。都会のほうが税金やら地代やらべらぼうだから厳しいかもしれませんね。関東近郊、ほどほど田舎の勝ち組ホールってのが一番いいかもしれません。それに私たちは何もパチンコ店だけやってるわけじゃない」

 地場のパチンコ店といってもホールだけやっているわけではなく、多角経営も欠かせないそうだ。ボーリングやダーツ、ビリヤードなどアミューズメントの複合施設はもちろん、長く経営してきた老舗なだけに不動産も持っていて、ファストファッションのチェーンや釣具チェーン、フランチャイズのコンビニなどに貸している。不動産事業が営業利益の4割にも及ぶテレビ局ではないが、堅実な不動産投資をしてきた会社はやはり強い。むしろコロナの自粛、長期閉店で店子の経営相談に乗ったこともあるという。

「将来ですか? 私も今年で48歳、定年まであと20年もありません。それまでに業界がどうなってるかわかりませんが、今回のコロナを乗り越えて、より楽観的に考えるようになりました。幸い裕福な家に生まれ、資産もあります。自分の収入もまあ、同世代としては恵まれている方でしょう。妻も子もいて家もある。一寸先は闇と言いますけど、私は思いませんね。他人を指していちいちそんなことを言う人は、かわいそうな人なのでしょう。この年になると、勝負がつき始めていることくらいはわかります。結果、まあ私は幸せな側なのだろうということも自覚します」

 時折、西口さんはあの西口に戻る。いつも自信たっぷりで、頭の切れるパソゲーオタクの西口だ。パチンコ業界の先行きが心配かと聞くと、西口は笑って首を振った。締めの蕎麦に箸をつける。

「どんな仕事もそうでしょう、エンタメなんて水物です。その中で、パチンコはなんだかんだ上手くやってきたほうですよ。むしろこの日本でこれだけ定着したのは凄いことです。それがいきなりすべて消えるとかはまあないわけです。私もアラフィフ、現役でやれる時間も残り少なくなりました。仮に50代で何かあっても生きられるくらいの金はあります。なあ上崎、俺たちはもう、そんなことを考える年になったってこった」

 最後の言葉はあえてリアルの私、上崎(本名)と西口さんの会話にした。そうか、もう30年にもなるんだな ―― 。団塊ジュニアの中で西口さんは間違いなく勝ち組で、いきなり一文無しのホームレスになるとか極端な話はまず無いだろう。パチンコホールの経営幹部、読者の中にはいくらでも罵詈雑言を用意する人もいるだろうが、知ったことかの他人同士、個々人の問題であり、別に西口さんが業界を背負う必要もなければ関わっているだけで見ず知らずの名無しに叩かれる言われもない。よほどの大人物、スーパースターになった団塊ジュニア以外の一般人はみなそうだろう。そして私たちは折返しどころかもう、終わりの準備をぼちぼち始める時期に差し掛かっている。

「そうは言っても、うちの子が入社したいと言ったら止めますけどね、パチンコ屋が恥ずかしいとかじゃなく、さすがに30年とか40年のスパンで考えたら難しい。私の世代で終わりかなとは思ってます。日本そのもの、と言ったら怒られますかね。嘘だとか日本から出てけとか言われるかもしれませんが、ジャパン・アズ・ナンバーワンのころに比べたらひどいもんでしょう。内需産業で減り続けているのはパチンコだけじゃない、移民でもどっと入れなきゃ止まらないほどの人口減なんだからしょうがない話です。だから子どもは将来、どんどん海外に出たほうがいいです。もしくは海外相手の仕事。英語圏はもちろん、中華圏の仕事でしょうね。30年後、2050年の日本なんて、私たち団塊ジュニアの老人が圧倒的多数の国ですよ、その辺は日野さんのが詳しいかな」

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