しかし、とも思う。1頭ずつの完全セレクトならば100円でいいのである。的中ならば究極のローリスク・ハイリターン馬券となる。
そこでルールを決めた。前半の3レースはそれぞれ2頭に絞る。後の2レースも3頭まで。これで最大72通りである。
2週やってみていずれも【1】を外してパー。【5】まで望みをつなぎ、そのドキドキ感を味わいたい。作家デビュー後、文学賞の最終選考に5度残ったけど、あの感慨に近いのかもしれぬ(全部落選!)。
迎えたオークス開催日。買い目を【4】までは2頭ずつ、オークスは大本命1頭のみの16通りに絞った。5戦することもあって、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将と5人で戦う剣道か柔道の団体戦に似ている。ムチをふるうから竹刀を使う剣道かな。
京都10R、先鋒の幸が勝った! 続いて頼りになる次鋒の武も勝利。そして中堅の鮫島克もきわどく勝ち切ったのである。ところが副将の坂井が池添に敗れた。大将戦(オークス)では松山で勝ったので4勝1敗。でもダメなものはダメである。
剣道の団体戦では1勝4分けでも勝ちだが、こっちは5戦全勝しなければいけない。でもいけそうな気もする。堅実ではなく勝ち切れる馬を選ぶ王道感が清々しく、乾いた打突音が頭に響くようで。いつか大将戦で勝ち切ることを!
●すどう・やすたか/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年6月12・19日号