つくづく記憶は曖昧だ。自分では贔屓だと信じていた北村宏司騎手の欄には赤も緑もない。ゼロである。20レース以上、5万円強(金額も明示される)も買っているのにただの一度も馬券に絡んでいない。そういう事実がはっきりと分かる。おそらく掲示板に載るなどの見せ場はあったはずだが、しかしゼロとはあんまりである。走るのは馬だけど、「縁がないのか」とため息のひとつも出てくる。もちろん、私が買っていないときに北村騎手はちゃんと勝っていたりする。
反面、贔屓ではないはずの騎手の回収率が400%なんて出てくる。藤田菜七子騎手の馬券は一度も買っていないと思い込んでいたが、馬連で手広く絡めているときに的中していたのだった。
一発万馬券を取れば棒グラフは急伸する。先の北村騎手とも一気に復縁できる。ちなみに「払戻金別成績一覧」では開催地ごとに払戻金内訳の分布が示され、万馬券的中証明書なんて粋なものもある。ぜひとも欲しい。
「投票成績照会」は本年度と前年度の成績を振り返ることができる。加入したばかりなので本年度分しかないわけだが、今年の暮れには2020年の収支が出ちゃう。27日の有馬記念の後で、しみじみ回顧することになるのだろうか。
それとも、競馬場の門が開くときがきて、集計などどうでもよくなっているのか。
●すどう・やすたか/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年7月3日号