──自分で決められることなど実は何もない、と、英月さんは書かれています。普段、自分の意志や力で生きていると思いがちですが、今回のコロナなど危機の状況下では実感せざるえない言葉です。

英月:人って、自分で決めているようで、決めてないんですよね。自分の都合だけでは、人生は絶対に行き詰まります。たとえば、お昼ご飯一つとってもそうだと思うんです。行こうと思っていた店が閉まっているとか、不測の事態はいつだって起こり得る。仕事も家庭も、思い通りにいかないことばかりですよね。でも、行き詰まっているのは私の思いであり、都合だけなんです。自分の都合を超えた大きな「はたらき」があることを知っているだけで、人生の質は全然違ってくると思います。

──アメリカにわたって9年半、アメリカに骨をうずめるつもりだった英月さんは日本に帰ることになります。跡継ぎだった弟さんが突如、寺を出たためでした。

英月:まさか、という感じで。理由はいまでもわかりません。要は、私は弟を頼りにしていたというと言葉は綺麗ですが、あてにしていたんです。弟をあてにして、アメリカで自由に暮らしていた。でも、この世にあてにできるものなんてなにもないんですね。人は変わるし、会社だって潰れるし、大地だって揺れるわけやしね。

 親は日本に帰って来なくていいと言ってくれたし、私自身もそろばんをはじきました。最初は貧乏だったけど、9年半で、アメリカでの生活基盤もできていましたから。それでも帰ったのは、親の寺への思いを知っていたからとか、いろいろな理由があるんですが、「写経の会」を始めて、自分の都合を超えたご縁ってすごいなと感じるようになったことも大きかったと思います。会を通して私自身が教えに出遇い、僧侶に、そして実家の寺を継ぐという決断をする私にならしめられた。自分で決断したようでいて、実は違うんですよね。

──日本に戻ったのは38歳のとき。住職としてのこの10年はいかがでしたか。

英月:帰国時、38歳、独身、ゼロから学ぶ日々。正直言って、辛かった。世間さまの目というものもありますしね。「救世主ヅラをしている」と言われたこともありました。一方で、仏教を学べば学ぶほど、引き込まれていきました。いま、私には居場所があります。尽くしていく場所がある。でも考えてみたら、もともとあったんです。もっといえば、私が生まれる前からあった居場所です。長い時間をかけて、長い道のりを経て、ぐるりと回って、ようやく気付くことができたということです。

 いま、48歳、独身です。特に結婚に焦ることも、したいとも、また反対にしたくないとも思っていません。いまは「しない」という縁が整っている状態ですが、今後、「する」というご縁が整えば、するんでしょうね。それは、それで楽しみです。ちなみに、しばらくお見合いの予定はございません!

◆英月(えいげつ)/京都市生まれ。真宗佛光寺派長谷山北ノ院大行寺住職。銀行員になるも、35回以上ものお見合いに失敗し、家出をしてアメリカへ。そこでテレビCMに出演、ラジオパーソナリティなども務めた。帰国後に始めた「写経の会」「法話会」には、全国から多くの参拝者が集まる。情報報道番組でコメンテーターを務めるほか、毎日新聞にて映画コラムを連載中。著書に『そのお悩み、親鸞さんが解決してくれます』『あなたがあなたのままで輝くためのほんの少しの心がけ』共著に『VS仏教』ほか。

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