ライフ

寺地はるなさん、普通を押し付けられる息苦しさ書きたかった

家族の在り方はそれぞれ

【著者に聞け】寺地はるな/『水を縫う』/集英社/1600円

【本の内容】
 刺繍や縫い物が好きな高校生の清澄は、学習塾に就職した姉、市役所勤めの母、裁縫の得意な祖母と暮らしている。離婚した父とはあまり会っていない。姉の結婚が決まり、清澄はウェディングドレス作りを買って出たものの、姉の希望通りのものが縫えず…。章ごとに語り手が入れ代わり、それぞれの秘めた思いが明かされる。落涙必至の家族小説。

 * * *
 家族の本音は一緒に住んでいてもわからないものだ。寺地はるなさんは、章ごとに語り手を代えて家族の物語を書いた。

「男の子はこういうもの、お母さんはこうするべき、というように、年齢、性別、立場によって課されるものは変わってきます。普通を押し付けられる息苦しさを書きたかったので、いろんな世代、性別の人が語るようにしました」

 高校生の清澄(きよすみ)は手芸が好きな男の子だ。子供の頃から祖母に手ほどきを受けて楽しんでいるが、中学のクラスメートから「女の子になりたいの?」とからかわれたことがある。

 寺地さんの9才の息子も、「男の子なのにピンクのTシャツなんだね」と声をかけられたし、かわいい筆箱を持っていたら、5年生くらいの女の子に「これは女の子のだよ」とたしなめられた。

「その子は周りの大人の価値観によって、そういう感覚を持つに至っているわけです」

 清澄の母親のさつ子も「手芸なんかやめとき」と言う。学校でいじめられたら困るからだ。「普通の男の子」みたいにスポーツに打ち込んでくれた方が、本人はともかく母親が安心していられる。

「私も息子がいいようにさせようと思っていても、心配はしますね。へんな目立ち方するのかなあと。失敗しないように先回りして、『やめとき』と言いそうになることは何度もあります」

関連キーワード

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン