新時代の解説スタイル

 人間による大盤解説というスタイルが続く一方で、現在、インターネットの動画中継では新しい試みがおこなわれている。その一つがソフトによる形勢スコアの表示だ。人間の大局観にあたる「評価関数」。読みにあたる「探索」。以上から算出される「評価値」という数字を見れば、どんな複雑難解な局面であっても、おおよその形勢がわかる。

 もちろん「将棋の神様」の目からすれば現代のソフトも完璧ではない。しかしそれでもソフトによる評価が大きくはずれることはまれである。

 近年、将棋番組を多く放映しているABEMAでは独自に「SHOGI AI」と名付けられたシステムを開発。評価値を「勝率」に換算し、常に画面の上に表示している。「55%-45%」ならば少しの差。「80%-20%」ならばかなりの差だ。

 この評価値は一手ごとに変化する。王位戦第2局では、終盤まで木村王位が優勢という評価値が示されていたが、藤井七段が勝負手を連発することで、猛烈な追い上げを見せ、ついには逆転してみせた。藤井七段の魔神のごとき終盤力が、評価値の数字というかたちで観戦者も読み取れるわけである。

 ABEMAではさらに、解説者の求めに応じて、候補手ベスト5が表示される。ABEMA広報担当者はこう説明する。

「SHOGI AIでは『勝率ウインドウ』『候補手』『AIインフォメーション』を主に表示しております。『候補手』は画面右にあり、現局面での最善手から5候補を表示します。最近は画面下に候補手から5手先までのAIの読み筋も表示しております。これは1手だけ表示していると、“なぜこの手をAIが選んでいるのかがわからない”ということがあるので、その先までの読み筋を表示することにより、SHOGI AIの真意がわかるようにしています。

 現局面から何千、何万、何億もの候補手を出して、その中での最善手を5手表示しております。ですので、深く読めば読むほどAIの色々な手が見えてくるため、勝率や候補手が都度変わるのはこのためです。日々進化するSHOGI AIと共に将棋をお楽しみいただければと思います」

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