国際情報

【アメリカ発】北朝鮮の人権問題をトランプ政権が放置!?

大統領選挙が北朝鮮の人権問題を覆い隠すのか(AFP=時事)

 コロナ問題が一向に収まらず、秋の大統領選挙を前に得点がほしいトランプ大統領は、一発逆転の賭けで4度目の米朝首脳会談に臨むのではないかという観測がある。宗教・政治・国際情勢など幅広い分野で多数の著書・著作を持つMario Alexis Portella氏は、このままでは北朝鮮の人権問題が放置されると警告する。

 * * *
 11月の米大統領選挙を前に、韓国の文在寅大統領はトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長に再会談を呼び掛けているが、その一方で米朝関係は依然として「薄氷の上」にあることも認めた。アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、実質的な進展がない限り、次の首脳会談の可能性は低いと述べている。

 昨年6月、トランプ大統領は北朝鮮の独裁的指導者に招かれて板門店に入り、北朝鮮で首脳会談した最初の米大統領となった。しかし、いまだに非核化は実現されていないため、それ以前の2回の首脳会談と同様に、この会談も批判された。そして、もしこの秋に2人が会うとしたら、また同じことになるだろう。金政権は米国が望むようにすべての核兵器を廃棄することには同意しないだろうから、軍備管理協定の方が現実的だ。

 仮に軍備に関する協定が実現したとしても、もうひとつ、トランプ政権が言及していない重大な要素が人権問題だ。北朝鮮は世界から孤立し、金一族によって3代にわたって統治されてきた。国民は金正恩氏と金ファミリーに完全な忠誠を示す必要がある。北朝鮮は依然として世界で最も代表的な独裁国家の一つである。現政権は7年目を迎えたが、表現、集会、結社、宗教の自由を含むすべての市民権・政治的自由は政府により制限されている。また、組織的な政治的反対勢力、独立メディア、市民社会、労働組合も禁止されている。北朝鮮政府は、住民への恐怖と支配を維持するために、政治的反体制派の恣意的な逮捕、拷問、処刑を日常的に行っているとされる。この独裁政権は、女性、子供、障碍者など、危険にさらされている多くの人々の権利を保護することもできていない。

 1972年、ニクソン大統領は電撃的に中国を訪問し、毛沢東主席と会談した。この歴史的会談の後、アメリカは中国と台湾という「2つの中国」を支持する立場を放棄して中国共産党を支持し、外交、貿易、ソ連との関係などを全面的に見直した。西側諸国の多くは、中国共産党が国民の人権問題を改善すると期待したが、振り返ってみると、それは経済帝国を生み出し、世界の隅々に組織的に根を張る手段を中国共産党に提供した。トランプ政権が北朝鮮の人権侵害に対処しなければ、同じことが起こるだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン