舞台上にアクリル板などは設置されておらず、演者は通常通りマスクなしで漫才やコントを披露していく。ピン芸、コント、漫才などが続くなかで、普段ともっとも大きく異なるのは劇場スタッフの取り組みだった。舞台転換中、コント用の道具を運ぶスタッフは、マスクの上にフェイスシールドを身につけており、通常は舞台に設置されたままのセンターマイクも、コンビが入れ替わるたびに新しいマイクと交換された。
途中、「換気のため10分間の休憩」が設けられ、劇場内の全ての扉が全開にされたほか、ステージ上にも大きなサーキュレーターが設置され、舞台上の換気にも取り組んでいた。劇場内ロビーでの飲食も禁じられているため、ロビーで密状態が発生することもなく、観客は静かに座席で休憩を取っていた。
公演後も「密」対策
人気芸人が次々に登場し、後半に向けて客席のボルテージも高まりをみせた。笑いに包まれ、束の間の非日常空間を味わうも、最優先されるのは感染拡大防止だ。知人とともに訪れた観客も余韻に浸って盛り上がることはなく、口数も少ない。
終演直後、密を作らないよう整列退場をするようアナウンスが流れると、後方の座席から順にスタッフに呼びかけられ、ソーシャルディスタンスを確保しての退館となった。通常はロビーでグッズ販売やアンケート配布なども行われるが、現在はいずれも中止。観客もスムーズに劇場を後にした。
帰りはエレベーターを避け、非常階段の使用が推奨されている。薄暗い非常階段の壁には注意喚起の張り紙が芸人のイラスト付きで掲示されており、各階の踊り場には扇風機が置かれ、空気が循環するよう工夫されていた。
「お笑い文化」を守るための努力
今回、再開したマンゲキに足を運んでわかったことは少なくない。劇場スタッフによる徹底した感染拡大対策。そして通常の3分の1にも満たないであろう客入りでも、全力で芸を披露するお笑い芸人たち。こんな状況だからこそ、笑いの力で目の前の人を幸せにしたい――。そんな思いが、コロナ対策を徹底するマンゲキの随所に満ち満ちていた。