ビジネス

企業版ふるさと納税で資金調達 兵庫の三セク・北条鉄道の挑戦

北条鉄道・法華口駅の行き違い設備

北条鉄道・法華口駅の行き違い設備

 国や地方公共団体が経営する公企業の「第一」、一般的な会社のことを指す「第二」ではない法人のことを「第三セクター」という。日本では主に役所と民間が合同で出資・経営する企業のことを指して「三セク」と呼んでいる。その三セクとして運営されている北条鉄道は、「北条町駅」(兵庫県加西市)からJR加古川線と神戸電鉄に接続する「粟生(あお)駅」(兵庫県小野市)までの13.6キロ全線が単線。単線ゆえに運行本数を増やせなかった北条線が企業版の「ふるさと納税」を活用することで行き違い設備をつくり、沿線住民の利便性をあげている。ライターの小川裕夫氏が、貴重な地元の足として鉄道への投資を行う北条鉄道の挑戦についてレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルス禍により、鉄道会社は軒並み収益を悪化させている。外国人観光客で活況に沸いていたJR各社は言うに及ばず、地元民の足として機能していたローカル鉄道も利用者は激減。存亡の危機に瀕している。

 特に、国鉄時代に赤字路線とされながらも地元民の足の確保を名目にして第3セクターへと移行したローカル路線は厳しさを増している。

 赤字を名目に国鉄から切り離された路線は、県や地元の市町村といった地方自治体が出資して設立された第3セクターに引き継がれた。国鉄時代から赤字だったので、第3セクターに引き継がれたからといって経営状況が好転するわけでもなく、赤字は税金によって補填されてきた。全国の第3セクター鉄道は慢性的な赤字経営でも、それなりに利用者がいたことや自治体財政に多少とも余裕があったことなどから延命していた。

 近年は少子高齢化の影響から、右肩下がりの利用者の減少が続いている。地方自治体の財政も逼迫し、利用者増は見込めないことから鉄道の存続を諦める自治体も出てきた。バスへの転換される路線も相次ぐ。

 兵庫県加西市を走る北条鉄道も、1985年に国鉄の北条線から転換した第3セクター鉄道のひとつだ。北条鉄道は小野市の粟生駅と加西市の北条町駅とを結ぶ約13.7キロメートルの路線で、全線が単線区間。そして、本社のある北条町駅を除けば全駅が無人駅。そうした環境だけを見ても、いかにもローカル線であることを感じさせる。

 そんな北条鉄道だが、このほど法華口駅に列車の行き違い設備が完成した。それまで平日ダイヤは1日17便の運行だったが、行き違い設備の完成によって列車の増発が可能になり、9月1日に運転本数を増やすダイヤ改正が実施される。ダイヤ改正以降は、朝夕を中心に5往復が増発される。

「JR・神戸電鉄との乗換駅でもある粟生駅を除けば、北条鉄道の全駅が加西市内に所在しています。加西市にとって、市民にとっても北条鉄道はなくてはならない大事な公共交通機関です」と話すのは、加西市ふるさと創造部人口増政策課の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン