とはいえ何事にも例外はある。たとえば羽生結弦選手と、ハビエル・フェルナンデスさんは、ライバル関係と友情を両立させ、ブライアン・オーサーコーチの元で切磋琢磨してきた。

同門で切磋琢磨した羽生とハビエル・フェルナンデス。2015年世界フィギュアのエキシビションでの笑顔(時事通信フォト)

◆選手はどういうときに移籍を考えるのか

 もちろんトップ選手でなくても、選手とコーチの関係は重要だ。上達にはコーチと深い信頼関係を結ぶことが必須であるし、フィギュアは遠征も多く、長い時間を共に過ごすことになる。では、選手はどういうときに移籍を考えるのか。大学まで現役を続け、全日本などで活躍した元女子選手(30代)はこう話す。

「コーチとの関係において、3つ大事なことがあると思います。一つは指導方針です。私は2人の先生に習いましたが、コーチによって、練習方針や教え方はけっこう違います。たとえばトルソワは、エテリコーチがジャンプを跳ばせてくれなかったと話しているようですが、コーチの方針として、全体のバランスを重視する先生もいれば、選手の自主性ややりたいことを重視する先生もいます。ジャンプの教え方も先生によって違った。その辺の相性はあると思います。

 2つめが、やはり、同じコーチに習っている他の選手との関係ですね。フィギュアのレッスン生は女の子が多く、年代はいろいろでも若い女子が集まりますから、まあ、いろいろあるわけです。特に自分とレベルの近いライバル選手がいると、負けたくですから、仲良くするのは難しいだろうと思います。魅せるスポーツですから、目立つのが好きでフィギュアスケートをやってる子も多いんです。私も、コーチが私を見てくれないと、他の誰かをひいきしているという、穿った見方をしてしまうこともありました」

 最後に挙げたのが親とコーチの関係だ。幼少期から始めるスポーツ特有の問題である。

「私は5歳から始めましたが、子どもですから、結局、コーチを選ぶのは親なんですよね。それなりにお金のかかるスポーツですし、早朝や深夜の練習への送り迎えなど、親の協力なしには続けられないだけに、親の意見は大きいと思います。今、報道されているロシアの選手たちの状況はわかりませんが、私の周りには、親とコーチの相性が悪くてコーチを変えた人がいました。といっても、フィギュアスケートのコーチがそれほどたくさんいるわけではないし、住んでいる場所によってリンクの場所も限定されるから、難しいです」(同前)

 様々な要因が絡むだけにコーチと選手の関係は難しいのだろう。タラソワさんは「少女たちは(しかるべき場所を)探している」と語った。今年はコロナ禍で厳しい環境が続いているが、将来と才能のある選手たちがよりよい場所に辿りつけることを願うばかりだ。

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏
「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト