「とにかく、吉永さんのお父さんが猛反対したんです。渡さんとの結婚が、というよりも結婚そのものを認めようとしなかった。吉永さんは清純なイメージで売っていましたから、そのイメージが傷つくことを恐れたのです。吉永さんに専業主婦になってほしがっていた、渡さんのご両親の意向にも吉永さんのお父さんが大反対だったようですね」
渡さんの評伝『渡哲也 俺』(柏木純一著/毎日新聞社)には、当時を振り返る吉永のこんな言葉が記録されている。
「どちらかがやめれば成立するのでしょうが、役者同士の結婚は絶対に無理だと思っていた」
それが、吉永の偽らざる気持ちだったのだろう。悲恋に終わった2人だが、互いに結婚した後も、共演者としては息の合うところをたびたび見せてきた。そこに見られるのは、スターとスターだからこそ築ける、誰も立ち入れない関係性だ。
「2人は1998年公開の映画『時雨の記』で共演していますが、これは約30年ぶりの共演でした」(前出・映画関係者)
そこで2人が演じたのは、プラトニックな恋におぼれる妻帯者と未亡人だった。
「原作は1970年代に書かれた小説で、吉永さん自身が長年、映画化を夢見て企画した意欲作でもありました」(前出・映画関係者)
そうした役柄での共演は、否が応でも耳目を集める。映画公開の記念イベントでは、『不倫についてどう思うか』という直球の質問も投げかけられた。
渡さんは受けて立った。
《世の中には本音と建て前があって、もしバレなければあってもいい》と“肯定”すると、《人が人を好きになるという気持ちは誰にも止められない。ずっと恋をしていくのが人間》と吉永も調子を合わせる。
秘められた恋を肯定する2人は、リップサービスだったのか、役が抜けないのか、はたまた結ばれなかった若き日の恋に思いを馳せていたのか、イベント会場の誰もが2人の真意を探ろうと必死だったという。
※女性セブン2020年9月3日号