中国製なら価格は半分

 米国がファーウェイをはじめとする中国企業に神経を尖らせる理由について、諜報工作に詳しい国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう分析する。

「2017年に中国で成立した国家情報法では、民間企業や個人が持っている情報について、政府の情報機関に提供する義務を定めている。つまり、中国に本社がある企業とつながると、情報を中国政府に握られてしまう可能性があるということです」

 なぜ自衛隊は、米中の争いが激化した時期に、中国製のサーモカメラを調達しようとするのか。

「サーモカメラの市場は中国製が70%を占め、日本製は価格面でまったく太刀打ちできません。同程度の機能のサーモカメラは日本製で100万円以上しますが、中国製はその半分ほどで済んでしまいます」(尾崎氏)

 防衛省関係者が事情を明かす。

「調達の要求が出た時点では、まだNDAAで除外企業が指定されていなかった。NDAAの発効後に事態を把握した職員が、担当者に『大丈夫なのか?』と相談したところ、『このままでいい』との判断だったそうです」

 防衛省に聞くと、「日本の法令に基づいているので問題ない。セキュリティーも対処している」(防衛装備庁調達企画課)と回答。

 米中が安全保障をめぐって対立激化するなか、自衛隊にも緊張感を持った行動が求められる。

●レポート/小川善照(ジャーナリスト)と本誌取材班

【プロフィール】おがわ・よしあき/1969年、佐賀県生まれ。『我思うゆえに我あり』で、第15回小学館ノンフィクション大賞の優秀賞を受賞。雨傘運動以来、香港へ精力的に足を運び、取材を行なっている。近著に『香港デモ戦記』(集英社新書)。

※週刊ポスト2020年9月4日号

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