週刊ポストが入手した「調達品目表」

作戦前の動きが筒抜け

 調達予定のサーモグラフィーカメラとはどんなものか。例示された製品のホームページを見ると、〈0.5~1.5m〉の距離で、〈0.2秒で顔を検出〉して〈皮膚表面の温度を測定〉するとある。

 今回指定された納入先は、兵器や航空機、通信機材などの調査研究を行なう全国各地の自衛隊補給処となっているため、コロナ対策の一環として、そこに出入りする隊員の体温を計測するために使われると想定される。

 しかし、日本で同種の製品を扱うダンボネットシステムズ代表取締役の尾崎憲一氏はこう指摘する。

「自衛隊が調達しようとしているサーモカメラは、タブレット型で顔などを認証するもの。AI付きの監視カメラ同様、データの蓄積ができ、通信機能もついています。カメラを通じて情報が流出する恐れがあり、自衛隊という国防上重要な施設内での人の動きなどを外部に漏らすことになりかねません」

 軍事ジャーナリストの清谷信一氏の懸念も同様だ。

「何らかの手段で、場所や時間ごとの自衛隊員の出入りが顔画像付きで筒抜けとなれば、部隊の運用や作戦前の動きまで推定することが可能になる。どんなに優秀なスパイでも、そこまでの情報を盗むことは難しい。顔認証システムとネット上の情報収集を組み合わせれば、自衛隊は丸裸にされてしまいます」

 米国は、そうした情報窃取を中国企業が行なっているとして、排除に踏み切った。米司法省が今年2月にファーウェイを追起訴した際、「ファーウェイとその関連会社数社が数十年間にわたり、米国技術企業の知的財産を不正に利用していた」と主張している。

 ファーウェイ側はそれに「根拠がなく不公正」と反論し、全面的に争う姿勢を見せている。

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