SNSでシェアが多いと信じてしまう若者たち
8月中旬には、兵庫県警は持続化給付金を不正申請し100万円を騙し取ったとして、神戸市の会社員の男など3人を詐欺の疑いで逮捕している。男たちは100人以上の名義を使って申請を繰り返したとされ、詐取したお金は暴力団に流れた可能性があると見られている。さらに8月26日、名古屋市の会社役員など3人が愛知県警に逮捕されたが、これには愛知や長野、三重各県のフリーターや大学生ら約400人が関与した疑いがあり、不正受給額は総額4億円に上る可能性がある。
大きな流行のようになってしまった持続化給付金にまつわる詐欺に、前出のAさんやBさんは関わらずに済んだ。しかし、もしAさんが失業していたら、Bさんが親に相談していなかったら、捜査対象に加わっていたかもしれない。
なぜ、これほど多くの若者たちが持続化給付金の詐欺に関わってしまっているのか。それは、今回の給付金がスピーディな支給を目的としており、申請が比較的、簡略化されているため、必要書類をそろえればPCまたはスマホで簡単に申請できることを悪用されているためでもある。それだけに、当初より「そんなに簡単に申請できるなら、不正申請が殺到するのでは」などの声が挙がっていた。その不安が的中してしまった形だ。
さらに、SNSで流布している持続化給付金にまつわる「評判」が、少しくらい逸脱したことをしても何とかなるという、奇妙な安心感を広めてしまった可能性がある。
SNSでの評判でタガがゆるむ
「あっという間に振り込まれたし、審査もしていないよね。誰でももらえるんじゃ」
これは、SNSに残っている、持続化給付金が手元にきたと言う人の書き込みだ。似たような内容のものが複数、確認されるが、SNSに体験談らしきコメントがあることが、不正に申請する誘いに乗る呼び水となった可能性は高い。SNS内には本当かどうかわからない怪しい投稿や無責任な投稿が多数見つかる。しかし、似たような投稿を何度も見るうちに、次第に書かれていることを真実と思い込むようになるものだ。これは「エコーチェンバー現象」と呼ばれる現象だ。「みんなやっている」「簡単に成功する」という思い込みは、他でもない身近な友達に誘われることで強化されてしまう。中高年が言う「テレビで言っていた」「町内会の○○さんが言っていた」と根っこは変わらないのだ。