「俺はあんたを認めない」
この疑惑に気づいたのは、札幌アイヌ協会理事の早坂ユカ氏だった。
早坂氏ら複数の理事の証言によれば、今年初頭にメノコモシモシから同協会会員たちに「雪まつりステージの出演依頼」が届いた。契約先には「メノコモシモシ」の名が記されていた。ところが昨年末、多原氏は協会理事たちに「雪まつり事業におけるアイヌ音楽を披露するステージのキャスティングを札幌アイヌ協会が受託した」と説明していた。そうであれば、契約先が札幌アイヌ協会ではなく、「メノコモシモシ」なのはおかしいと気づいたという。
この書面は、同じく協会理事の結城幸司氏のもとにも届いていた。結城氏が言う。
「札幌アイヌ協会は多原さんのものではなく、早坂さんも僕も協会の一員です。協会として受託すれば明朗なのに、どうしてメノコモシモシを通して出演者にギャランティを支払う必要があるのか」
この契約に疑問を抱いた複数の理事は、阿部会長・多原副会長に理事会および総会の招集と事実関係の説明を要求した。ところが、阿部会長は6月1日、雪まつり事業の監査が終わっていないにもかかわらず、コロナ禍を理由に総会を開かない旨、そして6月6日返送〆切の書面総会とする旨の通知を理事・会員に送付した。